SaaSスタートアップのマーケティング戦略 - Baremetrics Japan

Tomotaka Endo 2022 10 25

電話が鳴ってます。チェックしていた新しいスポーツジムの営業担当者からです。あなたは電話に出ますか?それとも、数回鳴っただけで電話を切りますか?

「電話に出ない」を選択した場合、あなたは多数派になります。そしてそれは、たとえあなたが入会する気満々だったとしても、同じことが言えるのです。

それは、大抵の人は営業担当者と話すことを好まないという単純な理由からです。

営業職の方へ:決してあなたのせいではありませんよ。あなたはきっと素敵な人でしょう。そして聞き上手なもんだから、みんなあなたと電話するのが好きなはず。ただ、あなたが何かを売っている時もそうだとは限らないですよね。

さて、それはなぜでしょうそれには、心理的な要因がいくつかあります。

まず、「懐疑心」です。

健全な懐疑心

先人たちは、何事もそう簡単に信用してはいけないということを、身をもって知ったのです。無害そうな倒木があるけど、そこには先週人を襲ったワニがいるぞとか、美味しそうな木の実があるけど、食べたらお腹壊すぞとか。

現代では、経済的・精神的に生き残るために、同じような懐疑的な見方をすることが多くなっています。

一般的に、私たちはパッケージを無条件に信用せず、成分表示を確認します。これセール品?いいね、でも本当にお得かな?そもそもこれ必要?このプラットフォームは無料で使えるけど、私の個人情報の扱いはどうなってるの?などななど、、、

こういった疑問は非常に重要であり、何十年にもわたって受けてきた、より疑わしいマーケティング戦術やビジネス慣行に対して、私たちが賢くなったということがわかります。

しかし悲しきかな、これは私たちが実際にいい製品やサービスを売り込まれたときでさえ警戒してしまうということでもあるのです。

誰かが何かを説得しようとすればするほど、本能的にそれに抵抗したくなるのです。

このことから、コントロールの必要性を感じます。

買う側はコントロールが必要

電話が鳴ったり、メールが届いたりすると、私たちは反応する立場に置かれます。タイミングも話も、自分ではコントロールできません。

そして、自分がその状況を動かす原動力になっていないことに、とりわけ、積極的に行動することでビジネスを成り立たせてきた創業者のような多くの人達が戸惑うのです。

創業者に電話するなと言っているのではありません。私が言いたいのは、現実であれ幻想であれ、コントロールの一部をどうすれば相手に託せるかを考えてみてほしいということです。それは、電話をかけるタイミングを彼らに決めてもらうなど、小さなことでもよいのです。

最後に、セールスの電話を受ける際には、暗黙のお約束があります。

罪悪感から約束させない

相手が具体的な目標を持っていて、その達成の是非は自分次第だということがわかると、会話に利害関係がついてきます。

営業担当者に時間を割いてもらった恩義を感じることもあるかもしれません。

これは買う側にプレッシャーを与え、セールス担当者の希望を叶えられないことに罪悪感を抱かせることになります。

本来、この3つの要因は、見込み客が常に後手に回っているように感じさせてしまうものなのです。

営業マンとして、見込み客が電話に出ないのは自分のせいではないであろうとわかっていても、それが数字に影響しているのであれば、わずかな慰めでしかありません。

しかし、この現象の背景にある心理を理解することで、アプローチだけでなく、キャンペーン戦略全体を改善することができるのです。

では、このような心理作戦に対抗するにはどうしたらよいのでしょうか。

プレッシャーを取り除く

この解決策は、マーケティング戦略にとって大概異質なものですが、、、何かを売るという目的を取り除きましょう

そうです、リターンのない運動資金の使用はリスクが高く、常識では考えられません。いずれにせよ、その結果は予測不可能であり、おそらく長期的にしか実を結ばないでしょう。

しかし、「買わなければならない」というプレッシャーがなくなると、不思議なことが起こるのです。

代替マーケティングを通じて成り立つ繋がりは、通常のセールスファネルとは全く違う筋道でなされます。見込み客のコンバージョンの代わりにビジネスのパートナーシップを築き、相手方との長期的な信頼関係を形成して、ブランドアイデンティティを構築します。

ここでは、代替マーケティング戦略についてのアイデアをいくつかご紹介します:

ヒント1:コミュニティの構築

  • イベント
  • ブログ、ワークショップ、メンターシップ

ヒント2:クチコミの話題を作る

  • コラボレーション
  • 特集

ヒント3:人間味のあるコンタクトをする

ヒント1:コミュニティの構築

イベント

イベント開催は、ビジネスパートナーや同業者、潜在客と出会い、コミュニティを形成する絶好の機会です。

例えば会社の創立記念日、資金調達や買収などのビジネスの大きな節目の達成、経営陣の交代、新入社員、新しいキャンペーンの立ち上げなど。

こうしたイベントも顧客発掘と捉えて、参加者にサービスに対する軽い感想を求めるとよいでしょう。

要は、地域主導のイベントは、売上に直結すべきでは全くないのです。

むしろ、創業者であるあなたやあなたのビジネスがどのような価値観に基づいて構築されているかを、地域の人々に知ってもらうチャンスなのです。

どんな感じのイベントか

このようなイベントは、あなたのビジネスにとって何が可能で、何が製品にとって意味があるかによりますが、対面式またはオンライン式で、招待者のみのコースディナーからオープン参加の出店まで、さまざまなものがあります。

オンラインイベントを主催する場合は、実際に来場して参加してもらうためのインセンティブを設けることが特に重要です。これは、くじ引きや情報提供、またはシンプルにちゃんとした形の出欠カードを送るのでもいいでしょう。

これは、マーケティング資金のより効果的な配分にもつながります。例えば、出欠を確約できない人がいたら、その人は間違いなくあなたのビジネスに長期的な確約はしないでしょう。

ブログと情報共有

その他に、コミュニティ形成の方法として、情報共有があります。

顧客発掘の初期段階において、いいSEOでのブログ、ビデオコンテンツ、ポッドキャストは、幅広い人々を惹きつけ、そのうちの何人かは、コンテンツの質に基づいて最終的に顧客になる可能性のあるような、強力なツールです。

このようなコミュニティには、コメント欄を設けるなどして発言権を与え、コンテンツに反応することで、より多くの人が関わってくることを検討してはいかがでしょうか。

通常、マーケティング用のアウトバウンドドメインは、メインのビジネスドメインと分けるのがよいでしょう。これは、コミュニティにアップロードされたコンテンツについても同様です。そしてこのような投稿の一部を、(もちろん著者の許可を得て)いつでもあなたのメインビジネスプロフィールに証言として取り込むことができることを忘れないでください。

さらに、ワークショップやメンターシップを提供することで、コミュニティを一歩先に進めることができます。

ワークショップとメンターシップ

理想を言えば、これは代替マーケティングキャンペーンにかかる費用の一部を相殺するためだけでなく、参加者に心からコミットするよう促すためでもあることから、ワークショップは収益化されるべきです。情報に関して言えば、人は無料のコンテンツよりも有料のコンテンツのほうを高く評価しますからね。

代替マーケティングの教育ルートは、販売への直接的なアプローチをとらないとはいえ、長期的なリターンを求めていないわけではありません。ワークショップの参加者の何割かが、最終的に顧客やビジネスパートナー、あるいはあなたの新しいチームメンバーになることが絶対的な目標なのです。

このアプローチのメリットを最大限受けとるには、あなたのコンテンツにみんな確実に長期的に参加してもらう必要があります。もし、このレベルの間接販売アプローチへの取り組みが、長期的にあなたのビジネスにとって現実的でない場合は、次にお話する短期的なコンテンツのアイデアについてのヒントをお読みください。

ヒント2:クチコミの話題を作る

コラボレーション

バズることや、タダで人々にあなたのサービスを推してもらうのは、あなたが完全にコントロールできるプロセスではありませんが、オーガニックリーチをさらに広げるためにできることはいくつかあります。

コラボレーションはその代表的な例です。関連企業とコンタクトして共同キャンペーンを行うことで、互いのオーディエンスにリーチできるだけでなく、自身のスタートアップに新鮮なアイデアをもたらすことができるかもしれません。

パートナー候補を見つけるには、自社と互換性があり、かつ直接競合しないサービスを考えなければいけません。SaaSビジネスでは、オンライン決済システム、プロジェクト管理ツール、その他顧客も使用しているツールなどが「製品の隣人」である可能性が高いでのす。

もちろん、さらに踏み込んで、共同キャンペーンを行うことが可能なあらゆる企業とのコラボレーションも可能です。

例えば、自身のSaaSが紙のゴミやエネルギー消費を減らすためのサービスを提供しているとしたら、環境保護団体は、「エコキャンペーン」の素晴らしいパートナーになるでしょう。

インフルエンサーコンテンツへの掲載

口コミで注目を集めるもうひとつの方法は、あなたの分野で活躍するインフルエンサーやコンテンツクリエイターに取り上げてもらうことです。このようなプロモーションは、有償、同等の報酬ベース、または場合によっては純粋にオーガニックである可能性があります。

ある媒体のコンテンツがあなたのサービスに近ければ近いほど、より多くのオーディエンスがあなたの製品へのコンバージョンを前向きに検討するでしょう。

この利点は、自分でフォロワーを増やす代わりに、多数のチャンネルや関心事にまたがるコンテンツ・クリエーターの既存のオーディエンスにアクセスできる点です。

もし、最終的に自分自身のSNSのフォロワーを作ることに投資したいと思った場合、Baremetricsのような「情報満載のブログ」からWendy'sの悪名高いTwitterアカウントのような「容赦ないおもしろチャンネル」まで、いくつかの「メディアペルソナ」の中から選ぶことができますよ。

ヒント3:(表向きは)人間味のあるコンタクト

ウォール・ストリート・ジャーナルの漫画家であるステュー・ハイネック氏は、著書『誰とでもミーティングをする方法』の中で、最も捕らえどころのない相手ともミーティングをするための戦術を紹介しています。

方法ですか?それは、マンガを描くという、ユニークで人間味のあるキャンペーン戦略です。

そのアプローチは効率的ですか?はい、効率的です。

この方法は確実で効率的なのでしょうか?決してそうではないので、賢く使いましょう。

「この方法」というのは、「漫画を描く」という意味だけではありません。個別のコンタクトの上層部をどのようにするかは、完全にあなた次第です。

つまり、この人間味のあるアプローチとは、最も有望な見込み客やVIP待遇の潜在的ビジネスパートナーにのみ許される「特別な機会」のようなものなのです。

では、”隠しコマンド”があると言ったらどうでしょう?

テクノロジーを使ってコミュニケーションをカスタマイズする

新しいテクノロジーが進化し続ける中、ソフトウェアは、ちょっとだけカスタマイズが必要な、人間味のあるアプローチを模倣することができるようになったのです。

Lemlistにはそのようなサービスの一つがあり、そのAIが、見込み客にユニークに見えるカスタム画像やビデオコンテンツを作成します。

どういう仕組みでしょう?

基本的に、カスタマイズの方法は機械的な定型文と同じです。

希望に合わせて個別化されたフックを含む、広い意味での万能メールです。

ビデオメッセージの場合、カスタムメイドされたフックは見込み客のホームページの画面のスクリーンショットで、営業担当者が登場するスプライスビデオの反対側は全く同じものになります。

その様子はこんな感じです。左側は、営業担当者の録画テンプレートで、右側は、見込み客の価格設定ページをスクリーンショットしたものです。

もちろん、見込み客の名前など、カスタマイズされたセリフでは、映像と音声は正しく同期しませんが、これは、バッファリングの問題のように見える小さなグリッチ効果によって、かなり簡単に誤魔化せます。

独創的でしょう?

数年後には、この方法がスタンダードになるかもしれませんが、現時点では、この技術はかなり斬新であることから、第一印象で失敗することはまずありません。

ポイント:常識を超えた方法でテクノロジー使うことを躊躇しない!

まとめ

結局のところ、代替マーケティングは、3つの主要なコンセプトに支えられているのです:

見込み客としてではなく、人としてアプローチする

常に売りつけらるような世の中で、これは信じられないほど解放的な気分です。

新しい技術が新しい方法を生む

そして、新しい手法や新しいテクノロジーを試すことを恐れず、自社のSaaSをユニークなものにしていきましょう。

有意義であること

そして最後に、どのような方法であれ、最初のコンタクトを有意義なものにすることです。

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Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.