MRRの本当の定義とは? SaaS用語を解説- Baremetrics Japan

Tomotaka Endo 2021 7 5

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは言葉通り訳すると月間定期売上ですが、日本語では一般的に「月間経常収益」と表記されます。簡単にいえば、SaaSやサブスクリプションモデルのビジネスで定額課金で発生した月額分の売上です。ですので、このMRRの中に、初期費用などの一回払いの売上は含まれません。では、なぜこのMRRは、SaaS企業やサブスクリプション企業で通常的に使用される重要なメトリック(指標)の一つになったのでしょうか?
そして、このMRRは少し誤解されて理解さてている気がします。この記事では、真のMRRの定義や意味を解説していきます。

MRRの定義と注意すべきポイント

MRRは、さまざまな料金プランと請求期間を1つの一貫した数値に平均化して、時間の経過に伴うビジネスの傾向を追跡できるようにする方法であります。いまの表現をよ〜くみてください。
「平均化」や「傾向」と言われたら、少し疑問に思う人も出るかも知れません。MRRは月次売上のうち月額課金分の売上と思ってしまうと大間違いです。お客様からなぜMRRが自分が集計した売上と違っていて、BaremetricsのMRR計算が可笑しいと訴えてくることが時々ありますが、MRRは財務会計上の売上ではありません。

売上の「継続性」がMRRの定義の出発点

会計では、よく財務会計、税務会計、管理会計などのいろんな手法があると言われていますが、MRRは管理会計の一つだと理解してください。一般的な財務会計とはどのように違うかと言うと、財務会計の売上は、実現主義や発生主義など複雑な基準はありますが、理解のため極めて簡単に纏めると、お客様に請求した課金額みたいなものです。それに対し、MRRは、確かにお客様に請求した課金額ではありますが、そこに一点条件があり、これからもずっと払い続けてくれるお客様からの売上のみがMRRに相当します。ここで、財務会計との大きな差が出てしまいます。
例えば、中途解約になったいわゆる離脱(Churn)顧客は、その月度もしくは年度の課金額が残っていても、MRR計算からは直ちに除外されます。

投資家観点もしくは企業価値重視で生まれたマネジメント手法

なぜ「継続性」がMRRの大事なポイントになるかと言いますと、SaaSやサブスクビジネスで重要なのは、今の瞬間を撮ったスナップショットのような売上ではなく、これからも払い続けることができるお客様からの売上であることです。一般的な会社の企業価値の計算の際にもEBITDA(利払い前税引き前償却前利益)のマルチプル(Multiple)を掛けて、その利益が継続続ける前提で何倍数で企業価値を計算しますが、SaaSやサブスクビジネスは、定期課金というビジネスの特徴上、MRRでその企業価値が大きく変わっていくわけです。やはりこのような企業価値最大化の観点からみたら、いまだけではなく、これからも払い続けるお客様からの売上が第一で、さらにそれを伸ばすために、如何に新規顧客を増やすか(New MRR)、既存顧客がもっと使ってもらうようにするか(Expansion MRR)、顧客離脱を防ぐか(Contraction MRRとChurn MRR)を悩まないといけません。

ARRではダメなの?

最近日本のSaaS企業の決算発表資料にもARR(年間経常収益)がよく登場してますね。確かに、決算発表ですから、単月の実績であるMRRよりARRで年間売上が金額が大きいし、見栄えも良いです。私もダメだとは言ってません。但し、ARRは単にMRRを12倍にした数字に過ぎません。もっと大事なのは、ずっと成長している会社なら良いですが、新規顧客獲得も多いが、顧客離脱も多い会社の場合は、唯の決算月のMRRを12倍にしたARRで業績を評価するのは、若干のリスクがあります。MRRを敢えて数学に例えると微分みたいなものです。MRRと共に、SaaS・サブスク企業の成長率を測れる指標であるQuick Ratioなどを綿密にみて行きましょう。

さらにMRRを勉強したい方は、ぜひ以下のブログをご覧ください。

Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.