『MRR』 Part 5 〜MRRを向上させるのに使える手法〜 - Baremetrics Japan

Tomotaka Endo 2021 5 19

MRRというものは、SaaSやサブスクリプションビジネスの成長の指標として用いられるものですので、上昇傾向にあれば嬉しいものですし、下降傾向にあればイライラしてしまうものです。

ただ、このMRRを向上させるのはそんなに簡単なものではありません。何ヶ月もかけ時間と労力をかけて、またはチームが奮い起こして開発し作り上げたものを最高のマーケティングキャンペーンを行い、全てがうまくいった時にMRRグラフを上方向に動き始めます。ただ一方で、時にはMRRに損失が生じることもあるのです。

SlackやZoomのような企業についてTwitterで下図のようにMRRがうなぎ上りする話を読むことがあるかもしれませんが、実際のところ... 99%のサブスクリプションビジネスはそのようなことはありません。

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その代わりに確認できるのは、ゆっくりした、痛みを伴うような増分、つまり地味な成長です。

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でも、このようにうまくいく場合も稀で、実際は散々な目にあうのが現実です。

この記事では、実際にMRRの成長を伸ばす手段を解説していきます。そうです、今日から取り組んで次に繋がるすべがあります!
それでは、MRR増加に繋がる4つの事柄を1つずつ確認していきましょう!

1. 値上げ

値上げなんて、皆分かっているポイントではあると思いますし、そんな事していいならやっているという話になるかもしれません。

ただ、実際には多くの企業が商品に見合った価格を設定しておらず、安すぎる価格で商品を提供していることがあります。
この原因としては、創業者が人の目を気にし過ぎてしまうからです。人間誰でも否定されるのは怖いものですよね。そのため、素晴らしい商品を作り出したとしても、自身で十分な信用をおけず、価値に見合った価格をつけられないのです。
そのため、低価格で商品を提供し、顧客に拒否される可能性を最小限に留めるのです。
実際に、顧客のために具体的な問題を解決する商品を開発した場合、1000円以下の価格は低過ぎます。 

顧客がSaaSソフトウェアを使う理由は最低でも以下の3つの中の一つの理由があてはまります。

  1. 1
    時間を節約する
  2. 2
    お金を節約する
  3. 3
    もっとお金を生み出す

これら三つの点はまとめて「価値」です。そうです、ビジネスは「価値」へお金を出すのです。

もしあなたが開発者として、商品が一月500円程度の価値しか生み出していない場合、新しい商品を開発することをお勧めします。ビジネスとして成り立たないからです。
これは、厳しい現実です。でも、同時にあなたの商品は一月500円以上の価値を生み出せる可能性も秘めているのです。
ではここで簡単な計算をして例えを見ていきましょう。

まず、顧客の時間はどれほどの価値があるでしょうか?1時間約5000円の価値があるとします。顧客の役職によって、1時間2000円や数十万円の価値がある顧客もいますが、まずは分かりやすい5000円として見ていきましょう。

もし1ヶ月6分以上の顧客の時間をサポート出来るソフトウェアを開発した場合、1ヶ月500円はすでに低価格だと言えます。この場合、最低でも一月2000円の料金設定をしても問題はないはずです。実際、多くの企業はその何倍も喜んで支払うでしょう。

もちろん、この話を聞いたからと言って心配な方も多いはずです。そんな方はテストしてみてはいかがですか?

まずは現在、販売している価格を二倍にしましょう。そうです、二倍です。何も変える必要はありません。 機能を再配置したり、制限を上げる必要もありません。ただ料金ページの価格を二倍にするのです。そして、待機です。
そして1ヶ月後にコンバージョン率、そして成長率が減少しているか確認してみましょう。多くの場合では両方とも減少せず、実際には両方とも増加するはずです!
この2倍戦法をを繰り返します。そして、また繰り返し、そのまた繰り返しです。利益の成長、または顧客生涯価値にポジティブな影響が見られなくなるまで毎月これを繰り返してみてください。適正価格が見えてくるはずです。

2. アップセル

誰があなたのビジネスにより信頼をおいているでしょうか?それはあなたのビジネスをまだ経験したことがない人でしょうか?それともそれは、あなたと日々会話をしたり何らかの関係を築いている人でしょうか?
それはもちろん日々関係を持っている人です。

そのため、既存顧客からの収益を成長させる方が新規顧客から収益をえるよりより安く行うことができます。両方とも必要がないとは言いません、ただ新しい顧客を確保(Cost Per Aquisition)するのはよりお金がかかるのです。

もしあたなの顧客が成長し、顧客は時間と共により大きな価値をあなたのビジネスから得ている場合、その時は価格もマッチする必要があります。
あなたはチャリティーをしているのではありません。ビジネスを提供しているのです。もし顧客がより価値の高い物を求めている場合、これはチャンスです。アップグレードした商品を提供しましょう。

あなたが提供する価値は顧客が支払う価格より、より優れていないといけません。ただ、両方が平行して成長できることが理想です。
これを設定するにはロジスティック的に様々な方法があります。クリエイティブな方法でアプローチができますが、異なる価格設定モデルを使い、いくつかの典型的な方法でMRRを増加することができるのでそれを見ていきましょう。

1. ユーザー数での料金体系

ユーザーごと、または座席ごとの料金体系は受け取った価値に価値を添付し提供をする典型的な方法です。 このようなタイプの価格は本質的に、どのビジネスからも制限なく価値が得られることを意味します。
顧客が成長し、顧客のチームがよりあなたの商品を使うことにより、あなたのビジネスもより多くを得られるでしょう。
もっとワイルドで、クリエイティブなことがしたいのなら、Slackのようにユーザーごとの価格と段階的な価格設定を組み合わせることができます。顧客がアップグレードした時、ユーザーごとの収益が自動的に増加します。

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有名企業の数々はこのタイプの料金・アップグレードモデルを採用しています。

Salesforce- 価格設定はユーザーごとに一月$25から最大で一月$300まで。
Atlassian - 各種商品を取り揃えていますが、 価格節制はユーザーの数がベースとなっています。
Trello - 価格設定はユーザーごとに一月$10ほどから始まります。
Slack - 価格設定はユーザーごとに一月$6から始まり、必要な機能によって料金が上がっていきます。

2. 従量制の料金体系

皆さんはHerokuまたはAWSなどのホスティング・インフラ会社の従量制、または利用ごとの価格を最もよく知っているのではないでしょうか。
サービスを利用すればするほどに、もっと支払うことになります。そこには文字通り、価値の交換の相関関係があります。

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3. アドオンでの課金システム

多くの顧客は既に基本プランを利用しているでしょう。ただ、そのプランに事前にどのように「バケット」機能を提供するか決める上で、何が正しいのか正しくないのか把握するまで当てずっぽうになってしまいます。
最大の特徴を「アドオン」とすると、あなたの顧客に完璧なツールのパッケージを作り出すのをより簡単にします。
また、アップセルするのもより簡単になります。(すなわち、「月1000円追加するだけで機能Aを得られる」となるように。)

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3. 無料プランの撤廃

無料プランはほとんどのソフトウェア会社でもデフォルトとして提供されているものです。今の時代に無料プランを無くすなんて馬鹿げているとも言えるでしょう。ただ、私が提案しているのはまさにそのことです。

無料プランを手放しましょう。あなたのソフトウェアにはそれだけの価値があります。
分かってます。簡単ではないですよね。では、どうすれば良いのか少しずつ見ていきましょう。
まず、無料プランの目的とは何でしょう?通常無料プランには1つ、または2つの意味があります。

1. マーケティングツールのための 「無料」

無料の何かがあるということは、それだけ多くの人をまずあなたのビジネスに呼び込むことに繋がります。そして、そこからプレミアムプランを顧客に売るチャンスを得ることができます。
ただ、ここで問題になるのが、ここでの「価値」は$0だということ。顧客はあなたが何と言っても、何を提供しても、「今何も支払っていないのに、なんでそれ以上支払う必要があるの?」という考えの元あなたのビジネスを見ているからです。
これは顧客はあなたのビジネスを価値のある商品ではないと無条件に思ってしまうからです。

間違いなく、消費者ビジネスにおいて、「無料」ということはマーケティングツールとして優れています。 それは、歴史的に顧客はとても価格意識が高く、彼らには無限の選択肢があるからです。また、顧客のお金を使いたいと思うモチベーションは、基本的に異なります(顧客が買うほとんどの物は、 「欲」で、「ニーズ」ではないからです。)
露骨に「無料」プランが有利に働くのは限られたビジネスしかないのです。スケールメリットはあなたに有利には働きません。おそらく、長期で大きな 「トップオブファネル・TOFU」 を設定、コンバージョン率をより分けることが必要になります。

その上、無料ユーザーをサポートするのは人件費を含め高くつきます。大きなベンチャー支援企業で、数千万そして数億もの経済力があれば大規模な無料ユーザーをサポートすることは可能ですが、ほとんどのベンチャーは無理でしょう。

2. ソフトウェアをトライアルするための「無料」

多くの企業が「無料」プランを使い、顧客にソフトウェアを試させる方法を提供します。これらの企業は「マーケティングツール」としての無料をよく理解し、顧客は、どのような価値が得られるのかを体験できます。一石二鳥ってなわけですよね!でも、実際は違うのです!

なぜなら、「無料のマーケティングツール」の欠点だけでにとどまらず、あなたは顧客にあなたのソフトウェアの可能性を制限されたビジョンを通して提供してしまっているからです。
このことから、顧客は「このソフトウェアの価値はあまりないし、たいして何の役にも立たない」という考えを持ってしまいます。
ではここでの解決策は何でしょう?
無料プランを提供するのではなく、例えばMangoolsのように時間限定で無料トライアルを提供してはどうでしょうか。

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無料トライアルは7日間、14日間、30日間、または60日間など何でも良いのです。顧客があなたのサービスを使いどんな価値が得られるのか分かることができれば良いので、トライアルの期間はその価値が得られる期間ならどれくらいでも良いと言えます。

4. 最大価格・無制限の撤廃

分かっています、SaaSの商品の価格設定は難しいということを。
価格設定はどんな商品を作り出す時でも最も難しい問題です。 あなたの商品をいくらに設定するかは簡単ではないし、何が正しく正しくないかも正解がありません。
ただ、一つだけアドバイスさせて下さい。これは頭に入れて価格設定をして欲しいのです。
「絶対に無制限のプランは提供しない。」

ある企業家の一人の話です。彼はSaaSのビジネスをしたことがありませんでした。そのため、良い価格モデルを設定するのはどこからともなく、適当な数字を選んでしまったのです。
その一つが、なんと「無制限」のプランで$99で提供してしまったのです。なんてことをしてしまったのでしょう!

価格設定を初めてする時、多くの人が、 「もし、一月に$99払ってくれる人がいるなら満足だ!」と思ってしまうのです。
とにかく利益を生み出したいあなたは、本来ならもっと得られるサービスをその価値に満たない価格で提供してしまいます。とにかく顧客を誘惑するために。
でも、それはやめてください。無制限に提供するのはやめるべきです。可能性としてはこの段階であなたの価格設定は低過ぎます。そしてこの「無制限」のプランは命取りになるからです。これがなぜなのかは次に説明するとしましょう。
以前話した通り、価格設定をする時は、その価値に合わせて価格を設定しましょう。顧客が支払っている価格と、あなたが提供しているサービスのバランスが取れていることを見定める必要があります。きっとあなたはもっと高い価値が得られるはずです。

これを元に考えると 「無制限」は意味があると思いますか? いいえ、ないですよね?これは、「無制限」の価値を設定したことで、どの顧客でも一定までの収入しか得られないように設定しまったからです。これは後々、頭を抱えてしまう問題になります。
これがどれだけ悪い動きだか分かりますか?
「無制限」のプランを選ぶ顧客は、あなたが得ている価格よりも指数関数的にもっと支払ってもいいと思っている顧客なんです!そんな顧客にはそれ相当の価格設定をするべきです。

まとめ

ということで、長くなりましたが、これらがMRRを成長させるための方法となります。

もちろん、このやり方に抵抗感を感じる方もいるとは思います。ただ、世間の常識が当たり前ではないのです。ビジネスは時に、大きな決断を求められるものです。是非、今回説明させていただいた以下をご参考、そして実践してみてください。

また、さらにMRRについて学びたい方はBaremetricsの他の記事もご覧ください。

Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.