SaaSのKPI管理に最適解は?BaremetricsとGoogle Analytics 4を徹底比較

Tomotaka Endo 2026 10 28

Google Analytics 4(GA4)は無料で、すでにサイトに導入されており、訪問者がどこから来たのかを把握するのには非常に優れています。しかし、MRR(月次定期収益)、解約率(チャーンレート)、純収益継続率(NRR)を教えてくれるわけではありません。それは設定ミスによるものではなく、GA4が測定している対象がそもそも異なるからです。

サブスクリプション型ビジネスを運営している方なら、このような瞬間に直面したことが一度はあるはずです。売上に関する疑問を解決しようとGA4を開き、「収益化」レポートを見るものの、Stripeの数値と一致せず、その理由が分からないという状況です。その答えは、大抵の場合、GA4が最初からあなたと同じものを見ていなかったということにあります。

当社は収益分析製品を作っているため、自社に関するセクションには印を付けています。GA4は無料であり、その役割を非常に優秀にこなすため、これをオフにすることを勧めているわけではありません。

 

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GA4は実際に何を測定しているのか?

GA4(Google アナリティクス 4)は、マーケティングおよび顧客獲得のための分析プラットフォームです。基本的にはクライアントサイドで動作します。Webサイトやアプリに埋め込まれたタグが、ユーザーの閲覧動作に応じてイベントを発火させ、Googleがそれらのイベントを集計してトラフィック、流入元、エンゲージメント、コンバージョンなどのレポートを生成します。

GA4は主に以下の3つの目的のために設計されています。

  1. 獲得(Acquisition): どのチャネル、キャンペーン、キーワードから訪問者が来たか
  2. エンゲージメント(Engagement): ユーザーが何を見たか、どれくらい滞在したか
  3. コンバージョン(Conversion): 定義した価値あるアクションを達成したか

また、GA4はGoogle 広告と強力に連携しています。それこそが本質であり、GA4が存在する大きな理由は「広告費の対効果(ROAS)を可視化すること」にあるからです。

GA4の「収益化(Monetization)」レポートは、基本的にEC(電子商取引)向けに作られています。カートに商品を追加し、チェックアウトし、金額の入った取引が発生する――という単発の購入イベントの処理には非常に優れています。しかしこのモデルは、「ユーザーがプロダクト上に滞在している特定の瞬間に、単発の購入が行われる」ことを前提としています。

サブスクリプションの収益は、そのような仕組みでは動きません。

なぜGA4ではMRRやチャーン(解約)を追えないのか?

タグの設定をどれだけ工夫しても解決できない、4つの構造的理由が存在します。

1. 定期課金は「ユーザーのアクション」を生み出さない

これが最も根本的な理由です。顧客のサブスクリプションが毎月14日に自動更新される際、顧客はあなたのWebサイトを訪問しません。ページも読み込まれず、タグも発火しません。

結果として、GA4は何も検知できません。収益は発生し続けているにもかかわらず、アナリティクスツールには一切の記録が残らないのです。設計上、毎月の収益の大部分はGA4から「見えない」状態になっています。

2. チャーン(解約)は「イベントの不在」である

決済ポータル経由で解約したユーザー、クレジットカードの自動引き落としに失敗したユーザー、あるいは単に支払いをやめたユーザーは、明確なクライアントサイドのシグナル(タグイベント)を生成しません。「何も起きていないこと」からチャーン率という指標を構築することは不可能です。特に、決済失敗やカードの有効期限切れによる不可抗力による解約(Involuntary Churn)は、クライアントサイドのタグからは完全に不可視となります。

3. GA4は「誰が顧客なのか」を理解していない

GA4はデフォルトで「デバイス」や「ブラウザ」を識別単位とします。一方で、決済・請求システム(Stripe等)は「サブスクリプション契約」単位で顧客を識別します。

両者を結びつけるには、User-IDを意図的に実装し、同期を維持し続ける必要があります。しかし、複数の端末で閲覧したりクッキーをブロックしたりするユーザーがいる時点で、その紐付けは途切れてしまいます。この架け橋がない限り、GA4における「顧客単価(Revenue per Customer)」には意味がありません。

4. クライアントサイドの計測はデータが欠落するため、財務データとして使えない

広告ブロッカー、同意バナー(CMP)、ブラウザのトラッキング防止機能(ITPなど)、そしてタグが読み込まれる前に離脱するユーザーによって、データストリームからイベントが漏れ出します。

マーケティングの「大まかな傾向」を分析する程度であれば、こうしたデータの欠損は許容範囲かもしれません。しかし、役員会に出す報告資料の数値としては到底受け入れられません。 GA4の売上数値がStripeのデータと一致することは絶対にありませんし、このギャップは修正できるバグではないのです。

GA4が仮にある取引を検知できたとしても、サブスクリプション分析を定義づける基本概念(決済失敗や顧客のアップグレードなど、SaaSにおいて非常に重要なイベント)を本質的に理解することはできません。

GA4 blind spot diagram [Updated]

Six events that constitute GA4 blind spots


GA4がSaaSチームにとって持つ「本当の限界」

製品カテゴリの不一致(サブスクリプション非対応)にとどまらず、無料版GA4には機能面での明確な上限(上限値)が存在します。

データ保持期間のデフォルトは「2ヶ月」

新しく作成されたGA4プロパティでは、設定を変更しない限り、イベントレベルおよびユーザーレベルのデータ保持期間は60日(2ヶ月)に設定されています。無料版での最大保持期間は14ヶ月です。これはGA4の初期設定でよくあるミスであり、一度失われたデータは永久に復元できません。設定を変更しても、保護されるのは「変更以降のデータ」のみです。

探索(Explorations)にのみ適用される保持期限の罠

この制限は「標準レポート」ではなく「探索レポート」に直撃するため、多くの人が困惑します。標準レポートを開いて期間を2年前(2024年など)に設定すると、一見数値が表示されます。これは標準レポートが、裏側で別途管理されている集計テーブルで動作しているためです。

失われるのは、その下にあるイベントレベルのデータです。そして、ファネル分析、経路分析、セグメント比較、コホート分析などは、まさにこのイベントレベルのデータに基づいて構築されています。数ヶ月ではなく何年ものスパンでコホート分析を行う必要があるSaaSビジネスにとって、「14ヶ月」というイベントデータのนี่は非常に厳しい制約となります。

データサンプリング(標本化)

一定のしきい値を超えると、GA4の探索レポートは全行データを処理するのではなく、サンプリングされた結果を返します。マーケティングの全体傾向を把握する分には問題ありませんが、財務数値を扱うには不適切です。

しきい値処理(Thresholding)

Googleシグナルや属性(デモグラフィック)データが関連している場合、GA4はプライバシー保護のため、ユーザー数が少ない行を非表示にします。これはシステムによって自動適用され、無効化できません。そのため、B2Bで最も重要な「超高価値な顧客セグメント(小規模だが重要度の高いセグメント)」が、レポートから丸ごと消えてしまうことがあります。

カーディナリティ(値の種類数)

ユニークな値が多いディメンション(高カーディナリティ)は、まとめて「(other)」という行に集約されてしまい、ロングテールの詳細データが消えてしまいます。

GA4 360(有料版)のコスト

GA4 360の定価は公表されていませんが、代理店(リセラー)経由での提供価格では最低でも年間約50,000ドル(約750万円以上)からとなっており、イベント数に応じて年間150,000ドル(約2,200万円以上)超まで膨らみます。360を導入すればデータ保持期間は50ヶ月に延び、サンプリングも軽減されますが、サブスクリプション収益に関する分析機能が追加されるわけではありません。

BigQuery連携という抜け道

標準(無料)プロパティでもBigQueryへのデータエクスポートが無料で利用できるようになった点は、大きな進化です(1日あたりの上限あり)。発生するのはBigQueryのストレージとクエリ費用のみで、多くの場合はほぼゼロに抑えられます。

これはデータ保持期間の制限を回避する標準的な解決策ですが、過去に遡って適用することはできず、SQLの知識が必須となります。そのため、創業者(ファウンダー)向けのソリューションではなく、データチーム向けの解決策と言えます。

GA4が本当に得意としていること

だからといって、GA4の利用をやめるべきだと言っているわけではありません。以下の領域において、GA4は非常に優れています。

  • 流入獲得の貢献度分析(アトリビューション): どのチャネル、キャンペーン、キーワード、ランディングページがサインアップ(無料登録)に繋がったか。当社のプロダクトを含め、収益分析ツールのカテゴリでこれをカバーできるものは他にありません。
  • Google 広告との連携: Google 広告に出稿している場合、その費用対効果を可視化できるのはGA4であり、サードパーティツールには真似できない深い連携が可能です。
  • サインアップ前のファネル分析: ユーザーが有料顧客になる前に発生するすべての挙動(LPのパフォーマンス、フォームでの離脱、初回訪問から無料体験までの経路)はGA4の得意分野であり、非常に優れた分析を提供します。
  • Webとアプリを横断した統一計測: 1つのイベントモデルで、マルチプラットフォームの計測が可能です。
  • 完全無料であること: 他のツールであれば高額な費用がかかるレベルの機能を無料で利用できます。集客〜初回獲得(Top-of-Funnel)のマーケティングアナリティクスとして、無料版GA4に勝るツールを探すのは非常に困難です。

誠実かつ正しい捉え方は、「GA4が弱いツールである」ということではありません。

「GA4の役割は、誰かが有料顧客(課金ユーザー)になった瞬間に終わる」 ということであり、サブスクリプションビジネスにおける収益の大部分は、その「後」に生み出されるという構造上の違いがあるだけなのです。

サブスクリプション収益の分析に「真に必要なもの」とは

MRR in Baremetrics

MRR with movement breakdown in Baremetrics

収益アナリティクス(Revenue Analytics)は、Webサイトではなく決済・請求システム(Billing System)のデータを読み取ります。

Baremetrics(ベアメトリクス)は、Stripe、Braintree、Chargebee、Recurly、Apple/Googleのアプリストア、あるいはAPI経由のカスタムソースと連携し、過去数年分を含むすべての請求履歴を自動で取得して以下の指標を算出します。

  • 内訳付きのMRR(月次経常収益): 日次の「新規(New)」「拡大(Expansion)」「再開(Reactivation)」「縮小(Contraction)」「解約(Churn)」の変化。単なる合計値だけでなく、「なぜ・どのように変化したか」まで可視化します。
  • 収益チャーン率・顧客チャーン率・コホート定着率テーブル: 顧客が離脱するのが「1ヶ月目」なのか「9ヶ月目」なのかを特定できます(この2つは解決すべき問題が全く異なります)。
  • LTV(顧客生涯価値)、ARPA(顧客平均単価)、成長率: プラン別、国別、請求周期(年額/月額)、その他任意の属性ごとにセグメント分析が可能です。
  • 投資家向け共有リンク: 顧客の個人情報(PII)を除外した状態で、投資家にそのまま提出できる指標レポートを発行できます。
  • Forecast+(業績予測機能): QuickBooksやXeroと連携して実際の損益計算書(P&L)を取り込み、ランウェイ(資金猶予期間)、バーンレート(資金燃焼率)、CAC(顧客獲得単価)、予算実績差分をサブスクリプション指標と並べて表示します。(※すべての有料プランに標準搭載)
  • Recover(回収機能 / 月額$129の追加機能): 決済失敗による未払いを自動回収する機能。最大7通のカスタマイズ可能なメール、ブランド化されたカード更新ページ、ペイウォールに移行するアプリ内バナー、SMSに対応しています。これはまさに、GA4では絶対に検知できない解約問題に対応するものです。(実績保証:Baremetricsの利用料以上の金額を回収できなければ、翌月の利用料は無料になります)
  • Cancellation Insights(解約理由分析 / 月額$129の追加機能): ユーザーが「解約」ボタンをクリックしたその瞬間に解約理由を収集し、理由に応じた個別フォローアップを実施します。

導入の手間はゼロ

これらすべての機能に、複雑なコードの埋め込み(タグ設置)は一切不要です。OAuthでアカウントを連携するだけで、決済システムがすでに保持しているデータを自動的に読み取ります。

料金プラン(年払いの場合・ARR規模による段階制):

  • Launchプラン: 月額 $49(ARR $360,000まで)
  • Growthプラン: 月額 $189(ARR $3,600,000まで)
  • Scaleプラン: 月額 $749(ARR $3,600,000超)

あえて「やらない」こと

Baremetricsは、流入経路のアトリビューション分析、チャネル別レポート、広告費の測定、ランディングページの分析、そして「顧客にならなかったWebサイト訪問者」に関する分析は一切行いません。 それらはまさにGA4の領分であり、私たちが取って代わろうとしている領域ではないからです。

GA4とBaremetricsを組み合わせて使う方法

本当にビジネス上の価値が高い疑問(インサイト)は、これら2つのツールの間に存在します。

  • 「どの獲得チャネルから、最もLTVの高い顧客が生まれているか?」 → チャネルの特定にはGA4が必要であり、LTVの算出には収益アナリティクスが必要です。どちらか一方だけでは答えが出ません。
  • 「リスティング広告(有料検索トラフィック)から獲得した顧客は、定着しているか?」 → トラフィックが顧客に転換したことはGA4が把握していますが、その顧客が9ヶ月後も料金を払い続けているかを知っているのは決済データだけです。
  • 「料金ページのリニューアルは成功したか?」 → GA4は「サインアップ数が増えたか」を測定します。収益アナリティクスは「獲得した顧客の価値(LTVやARPA)が高かったか」を測定します。

実務的な連携アプローチ

両者を繋ぐ最も実用的な方法は、共通の識別子(パラメータ)を持つことです。

ユーザーのサインアップ時に「キャンペーン」や「流入元(Source)」の属性データを決済システム側に送信・格納しておきます。すると、それが収益分析側でもセグメントとして利用できるようになり、「どのように流入してきたか」によって分類されたコホートのMRRや定着率を即座に引き出すことが可能になります。

実装自体はごくわずかな作業ですが、得られるリターンは非常に絶大です。数百人の既存顧客のデータを後から遡って補正するのは大変な手間がかかるため、可能な限り早い段階(サービス初期)で導入しておくことを強く推奨します。


比較テーブル

  Baremetrics Google Analytics 4
カテゴリ サブスクリプション収益アナリティクス マーケティング・獲得アナリティクス
データの読み取り元 決済・請求システム、サーバーサイド サイトやアプリからのクライアントサイドイベント
料金 月額 $49〜(年払い) 基本無料(360版は要問い合わせ、年間約5万円〜等の報告あり)
初期設定 請求システムとのOAuth連携(数分で完了) タグの設置およびイベント設定
MRRおよび変動の内訳(新規・拡張・解約など) ✅ ❌
収益チャーン・顧客チャーン ✅ ❌
NRR / 収益ベースのコホート定着率 ✅ ❌
LTVおよびARPA ✅ ❌
決済失敗の可視化と回収 ✅ Recover ($129/mo add-on) ❌ Structurally invisible
財務予測(ランウェイ、バーンレート、CAC) ✅ Forecast+ ❌
請求システムとのデータ整合性 ✅ ❌ Client-side loss is unavoidable
獲得・チャネルアトリビューション ❌ ✅ Best in class
Google 広告連携 ❌ ✅
サインアップ前のファネル・LP分析 ❌ ✅
イベントデータの保持期間 過去すべての履歴を保持 デフォルト2ヶ月、最大14ヶ月(360版は50ヶ月)
データサンプリング(標本化) なし あり(一定のデータ量を超えると発生)

Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.