SaaSにおける不本意な解約を防ぐ5つの方法 - Baremetrics Japan

Tomotaka Endo 2022 8 24

顧客は、あなたの製品をもう使いたくないから解約するんですよね?

実は、そうとは限りません。

不本意な解約という「小さな」ものがあり、それを放置しておくと、徐々にビジネスをむしばんでいくことになります。残念ながら、SaaSやサブスクリプションをベースとする企業の多くは、この現象が起こるのを防ぐために何の対策も講じていません。

その結果、不必要なキャンセル、収益の損失、悲しみ、絶望、悲惨、悪夢......ちょっと極端ですかね。でも不本意な解約の無視は、大きな損失になり得るのです。

このような「解約」を初めて耳にした方も、「解約」を知っているがどうしたらいいかわからない方も、問題ありません。

このガイドでは、不本意な解約とは何か、なぜ無視できないのか、どうすれば防ぐことができるのかについてご説明します。

不本意な解約(所謂 パッシブチャーン)とは

不本意な解約はパッシブチャーンとも呼ばれ、顧客の意思ではなくアカウントが終了してしまうことです。

一般的には、顧客が支払いに失敗し、その問題が解決されていない結果として起こります。支払いがないまま一定期間が経過すると、サブスクが更新されなくなり、解約となってしまうわけです。

不本意な解約は意図的に行われるものではないので、SaaSやサブスクリプション企業には解約を阻止することにあまり力を入れないところもあります。ほとんどの企業は、顧客自身が支払いが完了されていないことに気づいて自らそれを修正するだろうと踏んでいるのです。

ただ、いつもそうなるとは限りませんし、そうならなかった時というのが解約の原因になります。

ご想像の通り、これは大きな機会損失です。

顧客がアカウントをキャンセルする時のような自発的な解約とは異なり、意図していない解約をした顧客は、必ずしも製品に失望しているわけではありません。通常は請求のエラーが発生し、それを修正する必要があるだけで、引き続い支払う意思はあるでしょう。

我々のデータによると、SaaSやサブスクリプション企業は、不本意な解約によって、平均してMRRの約9%を失っています。毎月膨大な数の新規顧客を獲得しているのでなければ、ほとんどのSaaS企業はそのような収益をあきらめるわけにはいきませんし、実際、かつては、制御不能な解約がBaremetricsの成長を止めていました。

問題がわかったところで、解決策についてお話しましょう。

不本意な解約が起こる原因

まず、支払い失敗がどのように起こるかがわからなければいけません。ここでは、不本意な解約の原因として最も一般的なものをご紹介します。

クレジットカードの有効期限切れ

これは非常に一般的なものであり、また解決しやすい問題のうちの一つでもあります。

あなたも、「カードの有効期限が切れる1カ月位前にカード発行会社から送られてきて、その新しいカードを有効化したはいいものの、自分が支払っている月額プランのカード情報の更新はすっかり忘れていた」なんて経験をしたことがあるのではないでしょうか。

これは、まさにあなたの顧客にも時々起こることです。そして残念なことに、顧客が自分で登録されているカードを更新するまで、請求は行われません。

請求先情報に誤りがある

例えば、あなたの顧客が、リモートワークがもてはやされているのを耳にし、東京にバカ高い家賃を払ってオフィスを構える意味がないことに気づいて、本社をより安い都市に移転させたとします。

引っ越しに伴い、クレジットカードの発行会社に住所情報を更新しなければならないのに、彼らはあなたの製品の請求先情報を更新するのを忘れてしまいました。そのため、請求先情報が古くなってしまい、結局カードが使えなくなり、、、お察しの通り、不本意な解約につながります。

カードが限度額一杯になっている

限度額オーバーでカードが使えなくなったことがある人?はーい!

大丈夫、ここでは誰もあなたをジャッジしませんし、あなたは一人ではありません。実際、ある調査によると、米国人の52%がクレジットカードの限度額いっぱいになったことがあるそうです。

あなたの顧客もその52%に含まれるかもしれません。限度額いっぱいのカードにチャージしようとするのは、満杯のコップに水を注ぐようなもので、うまくいきません。

カードの紛失・盗難の届け出があった

クレジットカードを失くしたり、盗まれたりしたとき、大抵の人はまずカード発行会社に報告し、カードを解約します。

そして、新しいカードをもらって定期購入の請求先情報を更新するまで、支払いは失敗することになるのです。

ハードな支払い失敗とソフトな支払い失敗

先ほど説明したさまざまな支払い失敗の理由は、すべて以下の2つのカテゴリーに分類されます:

  1. ソフトな支払い失敗

  2. ハードな支払い失敗

ソフトな支払い失敗は、発行銀行が支払いを承認したけれども、支払いプロセスのどこかに問題がある場合に起こります。不本意な解約のほとんどは、ソフトな支払い失敗から起こります。

ここでは、ソフトな支払い失敗例をご紹介します:

  • クレジットカードの有効期限切れ

  • 請求先情報の誤り

  • クレジットカードの限度額超過

ハードな支払い失敗は、発行銀行が支払いを承認しない場合に発生し、次のような場合に起こります:

  • カードの紛失・盗難が報告されている

  • そのカードの口座が閉鎖された

  • カードが有効でない

ソフトな支払い失敗とハードな支払い失敗の大きな違いは、ソフトな支払い失敗の場合、後で再試行すれば通過する可能性がありますが、ハードな支払い失敗の場合は、何度やっても決済が行われない点です。

どちらの場合でも、顧客が解約する前に、支払い失敗を修正するための何らかのアクションが必要になります。顧客が請求情報を更新するのに時間がかかればかかるほど、損失を被るリスクは大きくなります。

以下は対策案です。

不本意な解約を防ぐには

先ほども言いましたが、不本意な解約で一番いけないのは、受け身になることです。「様子見」をしている余裕はないのです。

ここでは、顧客の支払い失敗の前後でできる、不本意な解約に対処する方法をご紹介します。

1. カードの有効期限が切れる前に顧客にメールを送信

顧客が製品を気に入ってこれからも使ってくれるのであれば、クレジットカードの有効期限が切れたからといって解約することはないはずですが、それは日常茶飯事です

クレジットカードの有効期限切れによる不本意な解約を防ぐ最も簡単な方法は、カードの有効期限が切れる前に、顧客に注意を促すことです。これは「事前督促/プレダニング」と呼ばれています。

ただし、カードの有効期限が切れる1週間前になってから通知するのはやめましょう。

クレジットカード発行会社は、大抵古いカードの有効期限が切れる30~60日前に、顧客に新しいカードを送るので、30日前にメールを送れば、その頃には新しいカードが発行されている可能性が高いのです。

Recoverをお使いなら(使うべきですが)、このプロセスを自動化できます。顧客のカードの有効期限が切れる30日前と、7日前に、カスタマイズ可能なメールを送信します。

以下は、当社が出すメールの例です。(日本語でも設定可能です)

これはとてもシンプルなステップですが、多くのSaaS企業がこれを実施していません。設定するだけで、お金を節約できます。

2. 更新のお知らせの送付(年間プランの場合)

これは、少し議論のあるところです。企業によっては、顧客にアカウントをキャンセルする機会を与えるかもしれないという懸念から、年間契約更新の前に通知を送らないことがあります。

しかし、ここからが本題です。

もし顧客が解約希望の場合、予想外の何万円(または何十万円)の請求がアカウントにあるのを見ても、その場に留まるように説得することはできないでしょう。

逆に、年次更新のメールを送ることで、支払い漏れや不本意な解約を防ぐ機会にもなります。

クレジットカードは3年ごとに有効期限が切れるものがほとんどです。ということは、年間契約者の中には、最初にあなたの商品を申し込んでから更新するまでの間に、新しいクレジットカードになっている可能性が高いのです。

事前にメールを送ることで、請求が近づいていることを知らせ、必要であれば請求情報を更新する機会を与えることができます。

こちらは、年間契約更新前の顧客に送られるメールです。

参考までに、このメールの開封率は平均73%、クリック率は11%です

3. ペイウォールとアプリ内リマインダーの使用

誰かにお金を貸したけど、会ったときにその話をされたことがない、ということはありませんか?

あなたは彼らがあなたからお金を借りていることを知っています。彼らがあなたからお金を借りていることを 知っている(少なくとも知っていると思い込んでいる)ことも知っています。でも彼らはあなたの家に来て夕食を食べ、テレビを見て、何事もないかのようにくつろいでします。

まだお金をもらっていないことにモヤモヤしながらも、あなたは何もできないでいます。

まあ、顧客のカードが支払いを失敗しても何も言わずに商品を使わせ続けるとは、そういうことなんでしょうね。

不本意な解約と呼ばれるのには理由があります。顧客がカードの有効期限に気づかない場合や、支払いに問題があった場合、顧客へのお知らせが必要です。

あなたの友人からの債権回収を手伝うことはできないかもしれませんが、あなたのビジネスでは、支払いが滞ったときの顧客のために、ペイウォールを設定することができます。

Baremetricsで行っていることの一例を紹介します。顧客の支払いが失敗したとき、私たちはこのようなアプリ内通知を出します。

顧客には、請求先情報更新のために7日間の猶予期間が与えられています。猶予期間中もアプリは使えますが、画面下に通知が表示されたままになります。

7日経っても請求先が確定しない場合は、アプリにアクセスするために請求先情報を更新するためのフォームを設置し、有料化します。

同じようなことを設定したい場合(ちなみに我々にとっては非常にうまくいっています)、私たちはこれをすべてRecoverで行っています。

設定はとても簡単で、友人に借金を思い出させるよりもずっと気まずくありません。

4. ダンニング/督促メールを複数送信する

筆者がBaremetricsに入社して製品の仕組みについて学んでいたとき、成長担当の責任者がRecoverの利点について話してくれたのを覚えています。

その中で、SaaS企業が利用している一般的な決済プロバイダーは、決済に失敗すると通常1~2通のメールを送信するだけだということを教えてくれましたが、これはとても変なことだと思いました。

マーケターとして、筆者はほとんどのメールをキャンペーンとして考えるように仕向けられてきました。受信者をある最終目標や行動に近づけるために、何度もメールを送るのです。

例えば、新規顧客に対してオンボーディングメールを1通だけ送ることはないでしょう。また、E-bookやウェビナーでお試し期間中の人や新しい見込み客に1通だけメールを送るようなことはありません。

では、なぜお金を借りている顧客に1回しかメールを送らないのでしょうか?

それがRecoverを作った理由の一つです。未払い金回収のチャンスを増やすために、顧客に一連のダニングメールを送ることができる(あるいは送るべき)のです。

ダンニングメールがどんなものかよくわからない、または知っているけど自作のためのヒントが欲しいという方は、こちらのガイドをご覧ください。効果的なダニングメールの書き方 (全て英語ですが、30以上の例文付き)

しかし、長い話ですが、複数のダンニングメールを送信することで、収益を回復する機会が増えます。上のスクリーンショットからわかるように、滞納者へのフォローアップメールを送ることで、潜在的に失われた数万円の収益の回収ができました。

もし、あなたが顧客に5回メールを送り、支払いが失敗したことを知らせたにもかかわらず、顧客がまだ情報を更新していない場合(誰がメールを開いてクリックしたかを追跡できます)、あなたは不本意な解約だけに対処しているわけではないかもしれません。顧客が情報を更新しないのは、製品をもう使いたくないからである可能性があります。

5. 支払い失敗の再試行

ほとんどの決済プロバイダーは、例えばStripeだと、クレジットカードの支払いが失敗した場合は最大4回まで再試行することができるというように、定期的な支払いが拒否された場合は再試行する機能が内蔵されています。

これでソフトな支払い失敗による不本意な解約を防ぐことができるのです。

ソフトな支払い失敗は、修正可能な何か、または技術的な問題によって支払いが失敗したということなので、後で再試行すると、支払いが完了する可能性があります。顧客は有効期限や請求先情報を更新しただけかもしれません。

ただし、ひとつだけ注意点があります。支払いに失敗したときは、必ず顧客に連絡しましょう。何度も何度もカードへのチャージを試みないでください。また、自動的に再試行する場合は、1日に1回ではなく、間隔を空けて課金するようにしましょう。

不本意な解約に対して受け身にならないこと

不本意な解約の良い点は、減らすのがかなり簡単であることです。問題点は、小さな問題のように思えるので、無視されがちなことです。

このガイドで紹介した5つのヒントを実践すれば、失敗した支払いで失っている収益のかなりの部分を簡単に回収できるようになるはずです。しかし、あなたが「様子見」を選択した場合、あなたは墓穴をほってしまい、そこから抜け出せなくなるでしょう。

Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.