プライシング戦略における質問に回答 - Baremetrics Japan

Tomotaka Endo 2022 4 26

プライシングというものは多くの起業家や経営者を悩ます大きな種の一つです。実際にやろうとしても、不安だったり、やり方がいまいち分からないということで敬遠している方も多いのではないでしょうか?

Baremetricsは2022年4月20日にStripe Japan様との共催で『プライシング戦略』をトピックとしたSaaSスタートアップ勉強会を開催いたしました。

もし、見逃した方は、まずはそちらの動画をYoutubeにて公開しましたので、是非ご覧ください。

そして、このブログでは、そのウェビナーにご参加いただいた方からQ&Aセッションのお時間にいただいた15の質問をまとめ、回答いたしました。プライシングで同じようなお悩みをお抱えの方はこちらをご参考いただき、ぜひご活用いただければと思います。


質問
 

Q1. プライシングを決定するために有用な顧客への質問は?

プロダクトがどう役立っているか?

これを使っていれば、将来的にはどうビジネスが変わっていくか?

サービスを使わなかった場合、人件費はどれくらいかかってしまうのか?(例:月収40万円の従業員が毎週20時間かけて行う作業量をサービスがカバーできるなら、価格は30万円が妥当かなみたいな考え方)

(いくらまでなら払えるかとは聞かずに)いくらだと、このサービスは高いと思うか?

既存の複数の顧客から、以上のような質問を通じてパターンを考え、戦略を練っていきましょう。

Q2. 顧客価値(Customer Value)ベースのプライシングの具体的な事例は?

医療向け予約サービスを提供するサービスの事例を紹介します。このサービスのターゲットとして、健康増進向けクリニックと大病院と顧客をセグメントできました。もちろん、大病院の方が売上が10倍以上あり顧客価値は大きいものとなります。

ただ、ここで「大病院向けなので通常の2倍の料金で課金させてもらいます」みたいな表現は露骨で親切でもありません。ですので、顧客価値で価格を変更する場合は、付加価値を強調するようにしましょう。この場合ですと、「医療向けに法律に遵守したサービスを提供させていただきますが、そのためにはコストがかかりますので料金を2倍にさせていただきます」のような表現を使ってプライシングを行うと良いでしょう。

プライシングの変更の事例をお探しでしたら、SmartHRのプライシング戦略を参考にしてみるといいかもしれません。彼らも2018年から3年連続で価格改正を行なっています。

Q3. 競合との差別化などの観点から値下げする際の注意点や他社の過去事例と価値の維持方法は?

競合に勝ちたいということからの値下げは基本的にオススメできません。というのも、競合も再度値下げを行うと終わりのない値下げの戦いとなり、マーケットとしても売上が上がらない構造になってしまいます。

また、値下げを希望する人の特徴として、LTVが短く、サポートへの要求も高い傾向があります。

そのため、値下げの選択肢を選ぶのではなく、営業やマーケティングを通じてより深い価値を伝えれるかが鍵となります。この活動を通じて大きな変更が半年ほどなかった時に値下げという選択肢も考え始めてください。また、競合とサービスの価値に差をつける方法としては、機能的改善だけではありません。バグの早期修正だったり、サポートの迅速の対応などを通じて、サービス価値を高めていくという方法もございます。

Q4. BtoCの教育分野で、日本国内と海外で価格の考え方・捉え方に違いなどはあるか?

国や文化の違いはもちろんあります。そして、BtoBよりもBtoCの方がお金を払いたくないという傾向は強いです。

アメリカと日本の通常の教育の違いとしては、アメリカはお金を重視する方向で、日本は教育のクオリティーを重視するので、塾などに多額のお金を落とすことに躊躇がない方も多いように見えます。

専門的(医療など)な教育分野のツールは、BtoBまたはBtoCのマインドセットで販売するかということで違いが出ると思います。日本もアメリカもエンタープライズ企業の方が高い価格で購入してくれる可能性があるので、BtoBを中心としたマーケティングをオススメします。

Q5. PMFの中での価格設定方法は?

最初は、多くのことを考え、心配するよりも、トライすることが大事。ただ、意識することとして、SaaSツールは思ったよりも利用者に価値を与えることがほとんどですので、今あなたが想像している価格の2倍の価格で販売するくらいが丁度いいでしょう。少し高いくらいで設定して、半年ごとくらいに見直していくという形で問題ありません。

最初は無料プランで提供しようと考える方もいるかもしれませんが、後々に実際に請求し始めると顧客が離れることが多いのでベータ版であろうとも最初から課金していくことをオススメします。

Q6. 値段の見直しをして、顧客から苦情や不満があった場合の対応方法は?

もちろん、事前の通知は必要です。メールでもいいので、しっかりと値上げの経緯や理由を伝えましょう。

それでも、大幅な値上げを実施する場合は、顧客からの苦情や不満が出ることは予想されます。もちろん、新しい価格に満足できない人はサービスの価値を全て把握できていない可能性があるので、再度カスタマーサポートを行う必要があるかもしれません。ただし、ここで重要なのは、無闇に割引を与えないということです。チャーンしてほしくないからという理由で割引をしてしまうと、このような顧客は後々多くのサポートやクレームを入れることがありますので、負担が増大することがよくあります。

もし、本当に割引を与えるのであれば、ユースケースの提供や2年契約の前払いなど、お互いにWin-Winとなる条件を提示しましょう。

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Q7. どのくらいの期間をかけて、価格変更を行うべきか?

プライシングは半年以上の時間をかけて行うことが多いです。 

  1. 最初の数ヶ月で、どれくらいの価格で提供するのが相応しいのかを顧客への聞き込みを含めて調査します。
  2. 次の数ヶ月で、新規トライアル者へ新価格プランを提示して、その時のトライアルから新規顧客へのコンバージョン率の影響を研究し、新プランの価格帯を決定します。ここで想定していたコンバージョン率に届かなかった場合は、1に戻ります。
  3. その後に新規顧客へ新プランを適用し始めてください。ここで想定していたよりMRRの伸びがよくなかった場合は、1に戻ります。
  4. 新プランが新規顧客にも受け入れられていると感じたら、既存顧客へ値上げの通知をしてください。
  5. 最後に既存顧客への値上げの実行となります。

全てを含めると、それなりの時間を費やして慎重に行なってみてください。

Q8. グローバルでみて、SaaS企業で一番プライシング戦略が優れている会社はどこ?

いまは少し評価が下がってますが、以前のIntercomのプライシングがSaaS業界のお手本として使われたことが多かったです。優れたというかプライシングの設定だけではなく、見せ方などにも科学や心理的な要素を取り入れていますが、よく言われるのが、Flute pricing model(フルート形の価格並べ方)や月額/年額のオプション、プランのネーミングなどの工夫です。また、各価格プランの機能制限と金額差をうまく調整することで、心理的にもっと高いプランに誘導することもあります。価格ページで最近よく話題になるSaaS企業はMailChimpSendgridなどがありますが、多くのグローバルSaaS企業のプライシングページをご覧になると分かるように、みんなお互いの戦略を参考にしているため、結構似ているような見た目になってます。

また、自分ことであれですが、Baremetricsの価格戦略も面白いです。よく日本の企業でもやりたがる価格設定ですが、顧客売上連動型課金です。いわゆるMRR成長と伴い課金が増えます。もちろんStripeさんも取引額の%で課金してますので、ある意味売上連動型価格戦略です。

一方、最近価格をわかりにくくするとか、隠して営業との相談に誘導するのは評価が結構下がります。

Q9. 新しい値付けをしたときに、前の価格を残すべきか?

これは、いままでの価格と新しい価格を同時に表示しておくということでしょうか?

古い価格を価格ページに残しておくというわけではなく、内部のオペレーション管理のために使わなくなったからという理由で古いプランを削除しないでくださいという意味です。というのも、将来的に社内メンバーや投資家の方々とレポートとして振りかえることもあるので、古いプランも非常に重要なデータとなります。

Q10. プライシング変更後の具体的な管理方法は?

プライシング変更直後においては、Baremetricsなどのツールを使用して新プランのMRRやチャーン率の変動を注視してください。もし、チャーン率が想像していたより高くなってしまった場合は、チャーンした顧客への対応が必要となります。

そして、一段落したタイミングでプライシング遍歴ドキュメントみたいなものを作ってみると良いと思います。そのドキュメント内には、いつ、どのプランをどのプランに変更して、どういった経緯で行なったか、チャーン率やMRRなどのビジネス指標への影響などを簡単にでもまとめておくと、将来的に役立ちます。

Q11. プライシングを下げる時の顧客の反応の事例は?

下げるということは基本的にありません。競合に価格で負けているからという理由で値下げに踏み切るのは危険です。ビジネスを成功させるためにも、値上げで対応しましょう。サービスの価値を高める方法やMRRを上昇させる方法は、機能改善以外にも営業、マーケティングの改善、カスタマーサポートの早さや質の改善など、まだできることはあるはずです。

ということで上手くいっている企業は値下げをすることがあまりないので、良い例を提供できません。申し訳ありません。

Q12.フリープランから有料プランを出す場合、MAU・DAUの低下、チャーンレートが上がったとしても試すべきか?

試すしかありません。現在のフリープランを無くすという段階に来ているということで、ビジネスのフェーズも変わってきていることと思います。ビジネスが成長してくると顧客層が変わってくるというのはよくあることです。また、値上げをすれば一時的にMAUDAU、チャーンへの影響は出るものです。

ビジネスをさらに成長させるために必要なものは何ですか。おそらく、この段階において、一番は顧客数ではなくMRRを上昇させることだと思います。次の一歩を踏み出すためにも無料プランを廃止するという決断をしてみてください。(どうしても気が引けるようでしたら、無料プランに大幅に制限をかけて、有料プランに誘導させてみてください)

Q13. 無料会員の有償化を狙う場合に気をつけるべきこと、また参考になる企業は?

無料プランは基本的にオススメしないとは伝えてきましたが、無料プランが適しているサービスもあります。事実、SlackZoomAsanaCanvaなどの企業も今でも無料プランを提供しています。無料プランが適しているサービスとして、コミュニケーション手段として活用したり、他のメンバーとコラボレーションできるツールと相性が良い傾向にあります。これらの企業を参考に無料プランと有償プランの区別を参考にしてみてください。

また、無料会員を有償化すると、多くのチャーンが発生することが見込まれますが、そこは理解の上でプロジェクトを進めてください。

もし、無料プランを残すようでしたら、無料顧客のログを確認または顧客インタビューを通じて、どの機能がよく活用されておりコンバージョンに繋がっているかをリサーチしてください。その情報をもとに、どの機能を制限して有料プランに誘導していくのかを決定すると良いでしょう。

Q14. プライシングを変更したときに、既存の顧客のプラン変更はどのように移行するべきか?

既存顧客は、今までの金額以上のものを請求されれば拒否反応を起こすのは当たり前です。顧客の気持ちを汲んだ上で、値上げの数週間前より顧客にはそのことを通知するようにしましょう。また、その際に値上げをする理由についてもしっかり組み込みましょう。顧客にとって値上げは、「売上を上げたいから値上げをするんだ」という商売人の自己中心的な考えだと思っている方がほとんでです。しかし、値上げをすることにより商売人は更なるリソースと共にサービス向上につなげることができ、結局は顧客が享受できる価値は大きくなるということをしっかり伝える必要があります。

また、どうしても既存顧客への値上げが心苦しい際は、既存顧客のプランはそのままで新規顧客に対して新しいプランを適用するようにしましょう。または、追加機能を発表したタイミングでその機能を持つ新プランを作成し、既存顧客をそのプランに誘導していくようにすると良いでしょう。

Q15. 社内でプライシングを管理するツールとして、有効なツール、便利なツールはありますか?

プライシングにはBaremetricsが役立ちます。Baremetricsはビジネス指標の可視化と分析を助けてくれるツールであり、プライシングにも活用できます。活用方法として、新旧プランごとに顧客をセグメントして、MRRチャーン率などのビジネス指標を監視することができます。これにより、値上げが順調に進んでいるかを随時確認できる上に、チャーンした顧客も即時に追うことができるので、その顧客へのフォローアップを時間を空けずに行うことできます。無料トライアルもございますので、是非ご活用してください!

Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.