純収益ベースのチャーン:ビジネスへの影響とは

Tomotaka Endo 2023 12 6

純収益ベースのチャーンをご存知ですか?
すでに多くのKPIを追っているかとは思いますが、それと同時に「メトリクスをあれこれ見ること」はもう疲れていませんか?

起業家は、脈絡のない個々の数字に振り回されるのではなく、具体的で実行可能な疑問に対する答えを出すようなメトリクスから目を離さないことが非常に重要です。

「ビジネスの安定性と持続可能性は今どんな感じか」
「顧客は製品に満足して関わってくれているのだろうか?」
「わが社は財務的に健全か?」

純収益ベースのチャーン率を追跡すれば、上記をすべて把握できます。
本記事では、その計算方法と、このユニークなデータポイントがビジネスの長期的な成長を示す強力なシグナルである理由についてお話します。

Table of Contents

純収益ベースのチャーンとは

純収益ベースのチャーンとは、既存顧客からの新規収益を考慮した上で、解約やダウングレードによって失われた収益を測定したものであり、その新たな収益には、アップグレードやその他のエクスパンション収益が含まれる場合があります。

そこには色々な要素がありますが、基本的にはチャーン率からエクスパンション(アップグレード等による収益増)を引いたものを測定することになります。

MRR(月次経常収益)のチャーン率がマイナスになる可能性があることを頭に入れておいて下さい。これは、例えば12人の顧客がアカウントをアップグレードしたことによる収益の増加が、他の場所でチャーンされた一握りの顧客による収益の損失で相殺されるといったような、「エクスパンションMRR」が「毎月のチャーン」を上回る場合に起こります。

ただし、ネガティブチャーンのガイドにもあるように、このような低い(あるいはマイナスの)数値は、実は良いことであって赤信号ではない、という珍しいケースもあります。

純収益ベースのチャーンの算出法

以下は、純収益ベースのチャーンを計算するための基本的な式です:

純収益ベースのチャーン

{(チャーンされたMRR)ー(拡大MR)}÷(30日前のMRR)× 100

MRRに関連する他のメトリクスと同様に、傾向を把握するために月単位での純収益ベースのチャーンを追跡するのがが理想的です。

上の式には、純収益ベースのチャーンに関するもう一つの重要なポイントが示されています。つまり、この計算には、すでに多くのSaaSのメトリクスを追跡していることが必要です。

もし、チャーンMRRとエクスパンションMRR(および過去1ヶ月のMRR)がまだ手元になかったら、少し調べてみて下さい(電卓を忘れずに)。

そこで、Baremetrics のようなツールが救世主となるのです。このツールは、SaaS の必見メトリクスをすべて並べて追跡し、式で示した他のデータポイントとともに純収益ベースのチャーンを自動的に計算します。

グラフを見れば、NRC1回限りの請求)レートが月ごとにどうなっているかが一目瞭然なだけでなく、計算の際に人為的なミスが生じる余地もなくなります。

純収益ベースのチャーンが重要な理由

いい質問ですね!繰り返しになりますが、他のKPIと純収益ベースのチャーンを「ランク付け」することは無駄な努力かもしれません。

純収益ベースのチャーンの特筆すべきは、より全体的な視点でビジネスを捉えることを促すという点なのです。多くの企業は、主にグロスチャーンを測定し、報告しています。ただ、それではビジネスの健全性の全体像が見えてきません。

考えてみてください。3%や6%のチャーン率は、ビジネスによっては心配の種になるかもしれませんが、エクスパンション収益を上回っている場合は、まったく意味が違ってきます。これは、純収益ベースのチャーンが、その視点や顧客全体へのアプローチの仕方を考える上で重要である理由を物語っています。

「どうすれば顧客の解約を防げるか?」にこだわるよりも、「どうすれば既存の顧客からより多くの収益を得られるか?"」の方にフォーカスすればいいのです。これは、「”希少性” か ”豊かさ”か 」のような考え方です。

SaaSのビジネスモデルにチャーンはつきものであることを覚えておきましょう。チャーンを完全になくすことができないので、顧客の喪失に固執するよりも、顧客の価値を高めることに注力する方が、(ビジネスと正気を保つために)より前向きであるのは間違いありません。

純収益ベースのチャーン率を改善するための5つの戦術

最後に、顧客価値を高めると同時にチャーン率を下げるという、二重の意味で重要な戦術をご紹介しましょう。

1. 既存顧客への新たなアップセルの機会の発掘

ここでは、特に驚くことはありません。顧客との定期的なコミュニケーションは、より良い関係を築くだけでなく、アップセルをしやすくなります。プランのアップグレードから新機能、期間限定キャンペーンまで、「聞く」ことの威力を無視してはいけません。

アップセルは、同じことを一からやり直すということではありません。Baremetricsは、比較的シンプルなクーポンキャンペーンを展開することで、年間30%増という驚異的なアップグレード率を実現しました。

2. 長期的かつより高額な契約の促進

これは、上記のポイントに重なるものです。顧客の成長に合わせて、より大きなプラン、より良いプランにアップグレードできるオプションがあるだけで、MRR増加のチャンスが常にあるということになります。アップセルメールでも紹介したように、長期契約(月単位でない契約)は、当然ながら、より長く収益の向上を享受できるということです。

一方、下位のプランを提供することで、顧客はダウングレードや解約の権限が与えられ、チャーン率を下げることができます。いずれにせよ、段階的な価格設定は、両者の長所をもたらします。

3. 製品のアドオンやアラカルト機能の展開

ネタバレ注意:事業拡大のためのにビジネスの全面的な変革や、まったく新しい製品の作成は必要ありません。

実際、チャーンの相殺のために、早急に導入できる以下のようなプレミアムサービスなどがあると思われます:

  • プレミアムカスタマーサービスまたは製品設定
  • VIPユーザー向けの限定コース、テンプレート、その他のリソース
  • プレミアム製品の追加アプリケーション統合またはアラカルト機能

例えば、Intercomでは、通常のプランの他に、製品ツアーのアドオンを宣伝しています。一方、Zendeskは他の製品から派生したカスタムアドオンを推進しています。

このようなアドオンは、エクスパンション収益がチャーンの顧客を相殺するいい例です。

4.値上げの実施の検討

さて、SaaSの価格設定は複雑であり、どのような形であれ値上げを軽んじるべきではありません。とはいえ、長い目で見れば、うまく行った値上げには価値があるものです。我々は、わずかな価格設定の調整によって、収益が3倍になることさえあることを実際に見てますからね。

一般的に、低料金の顧客ほどチャーンが多い傾向にあり、下の例では、中料金プランよりも低料金プランの方が収益チャーンが発生していることがわかります。もし、ビジネスが成長段階への移行中であったり、「割引」だけのプロバイダーとみなされたくないのであれば、増額を検討するだけの価値があります。

5. 顧客チャーンから目を離さない

最後に大事な一点、チャーン率を常に把握し、顧客が大量に解約の危機にさらされていないかどうかを把握しておく必要があります。チャーンが安定し、うまく対処できるところまで成長したら、もっと拡大に力を入れるのもいいでしょう。

このことで、Baremetrics のようなツールがなぜ重要であるかが改めて浮き彫りになります。重要なKPIをレーダーから逃がしてしまうのではなく、我々はそれらを全てフロントとセンターに置いておくのです。

何もなければ、KPIやメトリクスをプラットフォーム上で整理しておくと、スプレッドシートでの手計算でいっぱいいっぱにならなくて済みます。

純収益ベースのチャーン率を対処できていますか?

ビジネス全体の健全性を示す重要なデータポイントである純収益ベースのチャーン率を把握することは、最優先事項であるべきです。

月ごとのパフォーマンスに基づいて、解約のアンケートやメールキャンペーンなどの追加戦術で、上で述べた介入をいくつか優先させるのもいいでしょう。

Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.