前受収益とその会計処理 - Baremetrics Japan

Tomotaka Endo 2022 9 26

ビジネスは信頼の上に成り立っています。お金と商品が同時に交換されることはめったにないので、信頼が必要なのです。サービスを提供するずっと前にお金を受け取ったり、逆にサービスを提供した後に支払いを待っていることもよくあるでしょう。

通常は、うまくいくものですが、サービスを提供する前に顧客から支払いを受けると、会計上ではどのような影響があるのでしょうか。

これは、「前受収益」を持っている状態になります。前受収益は、繰延収益と呼ばれることもありますが、「将来」のとある時点で提供するサービスに対して、「今」支払いを受けることです。

ただし、世界中の税務当局が、前受収益の認識については特定の要件を定めており、これらのルールを無視すると監査を受けることになるので、前受収益は注意が必要です。

今回は、前受収益について、どのような場合に収益を認識するのか、なぜ負債となるのか、などを解説します。会計のことはよくわからないという方も、例を交えて説明していきますのでご安心ください。

Baremetrics は、MRR(月間経常収益)、ARR(年間経常収益)、LTV(顧客生涯価値)、総顧客数など、ビジネスの主要なメトリクスをすべて表示する、見やすいダッシュボードを提供します。

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前受収益とは

顧客にサービスを提供する前に、商品やサービスの代金が支払われるというのが前受収益の本質です。

実現収益とは、商品やサービスを提供したこと、つまり売買契約上の義務を履行したことであり、前受収益とは、簡単に言えばその逆です。

手元にお金があるうちは、やはりサービスを提供する必要があります。このため、顧客のことを忘れないように、また税務当局に満足してもらうために、特別な帳簿上の措置が必要です。

では、それぞれの会計制度でどのような仕組みになっているのかを見てみましょう。

現金主義会計と発生主義会計での前受収益

会計制度には大きく分けて、現金主義会計と発生主義会計の2つがあります。(原文に現金主義会計と発生主義会計のリンクが付いてません(色のみ))

会社の規模、所有者のプロファイル、および現地の規制要件によっては、発生主義会計システムを使用する必要がある場合があります。

ただ、小さな会社でも発生主義で提供される追加的なルールの恩恵を受けることができますので、最初から発生主義会計に自主的に取り組むのもよいでしょう。

現金会計システムにおける前受収益

現金会計では、収益と費用はそれぞれ受け取ったときと支払ったときに認識されるということで、前受収益はないということになります。そして支払いが済めば、その収益は損益計算書に計上されます。

発生主義会計システムにおける前受収益

発生主義会計では、もっと複雑になります。

収益は、現金を受け取った時ではなく、儲けを得た時に計上され、収益を得ても、顧客がまだ代金を支払っていない場合は、資産である売掛金仕訳帳に収益は計上されます。

逆に、顧客から収益を受け取ったが、まだ儲けを得ていない場合は、前受収益は負債である繰延収益仕訳帳に計上されます。

Baremetricsでサブスクリプションの収益をモニタリング

儲けが出たが現金を受け取っていない場合、あるいはまだ獲得していない現金が入ってくる場合、Baremetrics を使って売上データをモニタリングしてみましょう。

Baremetrics は、すべての売上データを簡単に収集、視覚化します。これにより、手元にどれだけの現金があるのか、どの顧客が支払ったのか、誰にまだサービスを提供しているのかを常に把握することができます。

クライアントが多数いる場合、ある人は年単位で契約し、ある人は月単位で契約し、複数のプランや様々なアドオンがある場合、MRR、ARR、LTV、その他多くを計算するのは難しいかもしれませんが、ありがたいことに、Baremetrics がこれら全てを代行してくれます。

Baremetricsは、SaaSの流動比率をモニターすることもできますので、売掛金が手に負えなくなっても、すぐに知ることができ、延滞債権を確実に回収することもできます。

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前受収益=負債?

はい、前受収益は負債です。会計報告原則によると、前受収益は負債として計上されなければいけません。

負債とは、あなたの会社が負っているものであり、オフィスビルの30年ローンから、今後30日間に支払わなければならない請求書まで、あらゆるものが含まれます。

そうすると「負債が【負うべきもの】であるなら、収益が負債であるわけがないだろう?」と不思議に思っているかもしれません。そうですね、このことを理解するには、前受収益の意味を理解する必要があります。

この場合、「前受」とは、顧客からお金を受け取ったが、まだサービスを提供する義務があることを意味します。

借りたサービスを「返す」までは、前受収益は、まだサービスを提供していないことを示すために「負債」として計上されます。

財務諸表上の前受収益

前受収益は、損益計算書貸借対照表およびキャッシュ・フロー計算書にそれぞれ別々の影響を及ぼします。

1.貸借対照書

前受収益は、貸借対照表の2つの場所に表示されます。

まず、顧客から現金を受け取っているので、現金および現金同等物の一部として表示され、これは「資産」となります。

しかし、まだ収益を獲得していないため、前受収益は「負債」として表示され、クライアントに対してまだサービスを提供する義務があることを示します。

ほとんどの前払契約は1年以内であるため、前受収益は一般的に「流動負債」に計上されます。

2. 損益計算書

前受収益は損益計算書に計上されません。

ただし、各会計期間において、契約の一部を履行することにより、前受収益勘定の一部を「収益勘定」に振り替えることになります。

この認識された収益は損益計算書に計上されます。

3. キャッシュ・フロー計算書

キャッシュフロー計算書は、どのようなお金が会社に入ってきたか、あるいは出ていったかを示すものです。

前受収益は現金収入なので、キャッシュフロー計算書の営業活動の部分では正の数で表示されます。収益が得られていないことは問題ではなく、現金が会社に入ってきたことだけが重要なのです。

前受収益の例

前受収益の仕訳の仕組みについて見ていきましょう。次の 3 つの簡単なシナリオを考えてみましょう。簡単にするために、すべてのシナリオで、顧客が SaaS 製品を使用するために月額 2,500円のサブスクリプション料を請求します。

  • シナリオ 1: 1 月 31 日に、顧客から 1 月中のサービスに対して 2,500円が支払われまた場合。
  • シナリオ 2: 顧客が、1 月中に提供したサービスに対する支払いを 1 月 31 日に行わず、2 月 28 日に支払ってきた場合。
  • シナリオ 3: 顧客が1月1日に30,000円を支払い、翌年以降もサービスを利用する場合

シナリオ 1

これは最もシンプルなケースです。収入を得たのと同じ瞬間に現金を受け取ります。両者は完全に重なっているので、現金の仕訳を借方、収益の仕訳を貸方にすればいいだけです。

ジャーナル (1月31日) 

借方

貸方

現金(資産、貸借対照表)

¥2,500


収益(収益、損益計算書)


¥2,500

シナリオ 2

このシナリオでは、2組の仕訳の使用が必要です。

1月31日、収益を得たが現金を受け取っていないので、シナリオ1と同様に収益勘定を貸方計上し、現金の代わりに売掛金を引いて、まだ現金を待っている状態であることを示します。

そして、2月28日に現金を受け取ったら、売掛金を貸方にしてその価値を下げ、現金を受け取ったことを示すために現金勘定を借方にします。

ジャーナル (1月31日) 

借方

貸方

売掛金(資産、貸借対照表)

¥2,500


収益(収益、損益計算書)


¥2,500

ジャーナル (2月28日) 

借方

貸方

現金(資産、貸借対照表)

¥2,500


売掛金(収益、損益計算書)


¥2,500

シナリオ 3

このシナリオでは、関連する収益を得る前に現金を受け取っていることになります。

1月1日に、キャッシュポジションの増加を認識するために、現金勘定から30,000円を引き落とし、前受収益勘定を貸し付けて、顧客にサービスを提供する義務があることを示します。

そして、毎月末に前受収益負債を2,500円貸方計上し、損益計算書の収益勘定を借方計上して、繰延収益の一部を稼得したことを示すことになります。

ジャーナル (2月28日) 

借方

貸方

現金(資産、貸借対照表)

¥30,000


前受収益(収益、損益計算書)


¥30,000

ジャーナル(1月31日と今後11ヶ月の月末)

借方

貸方

前受収益(負債、貸借対照表

¥2,500


収益(収益、損益計算書)


¥2,500


まとめ

売上を得たけど現金を受け取っていない場合、あるいはまだ獲得していない現金が入ってくる場合、ぜひBaremetrics を使って売上データをモニタリングしてみてください。

Baremetricsには、追跡に必要な収益メトリクスが全て揃っています。

Baremetricsは、MRR(月間経常収益)、ARR(年間経常収益)、LTV(顧客生涯価値)、総顧客数など、ビジネスに関する26のメトリクスを提供するビジネスメトリクスツールです。

Baremetrics は、決済代行会社と直接統合しているので、顧客に関する情報は自動的に Baremetrics のダッシュボードに流れます。

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Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.