MRR成長率 と 純MRR成長率:SaaSビジネスの基礎

Tomotaka Endo 2023 4 11

このブログでは, MRR成長率 と純MRR成長率の違いを示してから、純MRR成長率を伸ばす方法などについてお話します。

SaaSやサブスクリプション・ベースの企業であれば、MRR(月次経常収益)と純MRRに注意深く目を配りたいと思うでしょう。このメトリクスは、組織の健全性と成長の可能性を示す指標になります。SaaSのメトリクスとしてのMRRは非常にわかりやすいのですが、ビジネスモデルによって考慮したいニュアンスがあります。

Baremetricsは、ビジネスメトリクスのツールとして、MRRやその他重要なトレンドについてのインサイトを提供します。ぜひデモのダッシュボードをご覧になり、実際のSaaSやサブスクリプションビジネスでMRRがどのように見えるかをご確認ください。

MRR成長率 とは

MRRとは「月次経常収益」の略で、企業が毎月頼りにしている月収のことです。MRR成長率とは、例えば1ヶ月など、MRR のある期間から次の期間への変化のことであり、Baremetricsのダッシュボードで一目で確認できます。

このメトリクスは、チャーン率など、他のいくつかの計算と関連付けられることが多いでしょう。そしてMRRの低下は、獲得維持の努力の改善が必要であることを示す早期警告の指標になります。

MRRを計算するには、アカウントごとの平均収益にその月の顧客総数を掛けます。

MRR(月間経常収益)=【顧客数】×【平均課金額】

顧客の数がすぐにわかるか?そのデータはどこから来ているのか?今いくら支払っているのか?等、この方程式に必要な正しい情報を見つけるのはもちろん難しいです。

追跡ツールが十分でない場合、すべてを計上できない可能性があります。Baremetricsは、自身の顧客全員と、彼らがあなたに支払っている金額を記録し、自動的にあなたのMRRを計算します。このようなツールを使用すると、自分で計算するよりもはるかに正確です。

SaaSのビジネス指標
可視化・分析を始める

MRRやLTVなどの26を越えるビジネス指標を自動で追跡し、可視化します。
また、顧客をセグメントして分析してビジネス戦略構築のためのデータを提供します。
Baremetrics Bare

純MRR成長率 とは

純MRR成長率は、ある月から次の月までのMRRの純増減をパーセンテージで表したものです。純MRR成長率は、最も一般的かつ重要なSaaSのメトリクスの1つであり、認識しておく必要があります。

顧客数や平均課金額の変化にかかわらず、このメトリクスは、先月と比較した収益の増減を示します。

「MRR成長率は、【会社がどれくらいのスピードで成長しているか】という問いに答えるものであるため、SaaS企業が追跡すべき最重要メトリクスの1つです。」トム・トングス氏(Redpoint Venturesパートナー)

MRR成長率 と 純MRR成長率

MRRは、新しい収益が得られるか、顧客がサブスクリプションを解約、アップグレード、ダウングレードすることによって変化します。

解約とは、顧客がサービスの利用を無期限で停止することです。アップグレードは、例えば5ユーザーのパッケージから10ユーザーに拡大する場合など、顧客がパッケージを変更する場合に発生し、通常、より高い価格が設定されます。ダウングレードは、例えば10ユーザー用のパッケージから5ユーザー用のパッケージに縮小するなど、ユーザーがより低いレベルのパッケージに移動することです。

純MRR成長率は、このような要因の月ごとの純変動量を示しています。

MRR成長率と純MRR成長率には違いがあることを覚えておきましょう。純MRR成長率という言葉には正確な意味があり、チャーン、拡張、新規MRRを含む全てのMRRの変化を指します。

MRR成長率とは、あまり具体的ではなく、MRRがどれだけ増えたか減ったかを示す言葉です。例えば、「先月のMRR成長率は50万円でした。」と出た時に、文脈や企業がそれぞれの用語をどのように使用するかによって、企業のMRR成長率は純MRR成長率と同じになることもありますし、データのサブセットを指すこともあります。

MRRの成長は絶対的な数字であるため、単に成長率を追跡するだけでは不十分です。純MRR成長率は、月ごとのパフォーマンスを追跡することができ、SaaS企業の現在および潜在的な成長を示す確かな指標となります。

純MRR成長率の計算方法

純MRRの計算を始めるには、まず、新規ビジネスや再活性化、拡張のMRR並びに既存のMRRを考慮します。次に、そこからチャーンとダウングレードを引いて、純MRRを出します。

計算式としては、次のようになります。

【既存MRR】+【New MRR】+【復活顧客からのMRR】+【エクスパンション】-【チャーン】-【コントラクション】=純MRR

この計算を直近の月と前月で行ってください。また、トレンドの概要を見たたい場合は、過去3〜6ヶ月など、より長い期間を使うのもいいでしょう。

少なくとも2ヶ月分の純MRRがあれば、2ヶ月目の純MRRから1ヶ月目の純MRRを引くことで成長率を計算することができ、その結果を最初の月の純MRRで割って100をかけると、パーセンテージの金額が出ます。

例えば、1ヶ月目のMRRが10万円で、2ヶ月目に50万円になったとすると、成長率は400%になります。

以下はその計算式です:

(【当月の純MRR ー 前月の純MRR 】÷【前月の純MRR】)✕ 100 = 純MRR成長率(%)

計算は簡単ですが、何千もの顧客からデータを収集し、MRR のすべての変化を追跡するとなると、適切なツールなしでは重労働です。関連するメトリクスの手動計算をお望みでなければ、Baremetrics で MRR率と 純MRR成長率を見てみましょう。

Baremetrics は、顧客ケアに時間を割けられるように、すべての顧客からの情報、プラン変更、チャーンを自動的に取り込みます。こちらで無料トライアルをぜひご体験ください。

MRR成長率 から読み取れること

純MRR成長率は、あなたのビジネスについて、以下のようなことを明らかにします。

1. 会社の成長スピード

純MRRは、成長を見るにはいいメトリクスです。例えば、あなたの会社がB月に5,500万円を売り上げ、1,000万円の新規MRRを追加し、500万円のアドオンで現在のクライアントにアップセルを行ったとします。また、解約により200万円の損失が発生し、純MRRは6,800万円となりました。

収益面では、この会社は前月比23.6%の成長率で推移しています。

2. 営業チームのパフォーマンス

純MRR成長率は、ビジネス開発担当者がどの程度成果を上げているかを示すもので、業績の傾きを示す良い指標となります。また、純MRR成長率を歩合と連動させることで、販売チームに報酬を出すのもいいでしょう。

3. ビジネスの健全性

純MRR成長率は、ビジネスの健全性を示す重要な指標であり、年間を通じての計画や意思決定の指針となります。もし、新規顧客をコンスタントに獲得しているにもかかわらず、チャーンにより純MRRの成長が前月比で減少し続けている場合、なぜビジネスが顧客を維持できていないのかを調査する必要があると思われます。

純MRR成長率は、すべてのビジネスに適用されるのか

純MRR成長率は、新規顧客、アップグレード、減少、縮小などのすべての収益の変化を考慮するため、時間の経過とともに進捗を比較するには最も良い方法ですが、ビジネスのあらゆる段階で適用できるというわけではありません。

1年以上経過した新規事業で、収支が均衡していない場合は、この指標を使って、黒字化までの期間を計算することができます。

一方、残念ながら、創業1年未満の超初期段階のスタートアップは、純MRR成長率を有意義に使うことはできないでしょう。初期段階の新規事業では、売上ゼロの状態から成長しているため、劇的で指数関数的な成長が見られる可能性が高く、事業が成長するにつれて、この数字は減少に転じ、やがて安定することになります。

一過性の成長曲線ではなく、正確なトレンドを反映した計算をするために、1年から1年半の純MRR成長率を計算するのがベストです。

純MRR成長率を伸ばすには

もし、あなたの純MRR成長率が低下していたり、業界のベンチマークを下回っていたりしたら、軌道修正するために迅速な対応が求められます。ここでは、そのための方法を5つご紹介します:

1. チームへのMRR成長率のベンチマークの設定

MRR成長率を営業チームの重要なKPI(業績評価指標)の一部にすることで、営業チームはこれまでとは異なるアプローチで、価値の高い顧客に焦点を当てた営業を行うようになります。

2. アップセルへの注力

新規顧客の獲得には時間とコストがかかるので、代わりに拡張MRRやアップセルに注力しましょう。拡張MRRとは、アップグレードやアドオンを通じて、既存顧客から毎月生み出される収入のことです。

また、補完的でメインではない製品やサービスがあれば、抱き合わせ販売を推し進めるのもいいでしょう。

3. 失ったユーザーの再活性化

製品が改良されたり、製品への検索の関心の高まりが見られる場合は、キャンセルされた購読者や失効した購読者に連絡を取り、購読を再開できるかどうか見てみましょう。

4. チャーン(解約)の抑制

高価値の顧客がアカウントを一時停止、ダウングレード、またはキャンセルしていることに気づいたら、その顧客に連絡を取ってその理由を確認することは重要です。可能であれば、購読交渉、値下げ、プレミアム機能の無償提供などをしてみましょう。そして後からいつでも再度アップグレードが可能です。

その他の契約者は、支払いの失敗や却下が原因でチャーンが発生することがあります。不本意なチャーンを確実に解決するには、Baremetrics Recover のようなダニングツールの利用が効果的です。

5. テストの継続

最初の試行で価格設定のベストポジションに到達するのは難しいかもしれません。パッケージ、階層、価格、機能を試し続けることが、コンバージョンと顧客維持のベストポジションを見つけるための最善の方法です。

その他の重要なメトリクス

監視すべきメトリクスは、毎月の純MRRだけではありません。以下に、Baremetricsで追跡できるメトリクスをいくつかご紹介します:

1. ユーザー/アカウントあたりの平均売上

ARPU(Average Revenue Per User、またはARPAと呼ばれることもある)とは、アカウントごとに発生する月次または年次の収益のことです。ARPAで、アカウントの拡大や縮小の傾向が明らかになり、企業がどの料金プランが最も収益に貢献しているかが判断できるようになります。

2. LTV(顧客生涯価値)

LTV(顧客生涯価値、CLVとも呼ばれる)とは、平均的な顧客の、その企業での生涯における総利益貢献の総計のことです。つまり、LTVは顧客があなたのために費やすお金の総額を測るものです。

SaaSやサブスクリプションモデルのビジネスでは基本的なメトリクスとなり、LTVが高ければ高いほど、利益は大きくなります。また、顧客があなたの製品やサービスをどれだけ評価しているかを示す良い指標でもあります。

3. チャーン率

チャーン率とは、顧客が定期収入を得るためのサブスクリプションを解約する割合のことです。

ユーザーチャーン率は、一定期間内に解約した顧客の割合を算出します。

収益チャーン率は、ある期間に解約によって失われた収益の割合を確定します。顧客には価値の高い人もいるので、価値の高いアカウントだけでなく、複数の小さなアカウントを失うことによる影響も見ることが重要です。

純収益のチャーンは、一定期間に既存顧客から失われた収益の割合を算出し、その期間中に顧客のアップグレードによって得られた収益が考慮されます。

純MRR成長率の業界ベンチマーク

では、純MRR成長率の計算方法がわかったところで、いよいよ自社のステージに応じた成果を見てみましましょう。

ベンチャーキャピタリストのポール・グラハム氏は、初期段階のスタートアップであれば、週あたり5-7%、月あたり23-33%のMRR成長率を目指すべきであると言っています。Redpointのベンチャーキャピタリストであるトマス・トゥングズ氏は、資金調達後のSaaS企業では、15%の純MRR成長率を目指すべきであると述べています。

大抵のスタートアップ企業にとって、この成長率は非常に高いものですが、成功するビジネスの成長方法はさまざまです。

もし、あなたのビジネスが他のBaremetricsユーザーと比較してどのような位置にいるのかをご覧になりたい場合は、BaremetricsのOpen Benchmarks をチェックしてみてください。

このベンチマークデータは、900の全く正常なビジネスをサンプルとして算出するため、ずば抜けたものとなっています。この情報は、あなたのビジネスがどのようにあるべきかを理解するのに素晴らしい出発点となります

BaremetricsでMRRをより深く理解しよう

MRR成長率は、SaaSビジネスにとって最も重要なメトリクスであり、それによって、会社の健全性、成長性、可能性の継続的なモニタリングや、判断をすることができます

Baremetricsのモニタリングツールで、MRR、ARR、LTV、顧客チャーン、その他の重要なメトリクスが、単一の分かりやすいダッシュボードで表示されます。Baremetrics を収益源に接続することで、ボタンをクリックするだけで、最も価値のある統計情報に対するより深いインサイトを得ることができるのです。

MRR成長率やその他の重要なメトリクスを絶対に見失わないようにしてください。無料トライアルにサインアップして、顧客、価格、ビジネスモデルについてデータに基づいた意思決定を今すぐ始めましょう。

SaaSのビジネス指標
可視化・分析を始める

MRRやLTVなどの26を越えるビジネス指標を自動で追跡し、可視化します。
また、顧客をセグメントして分析してビジネス戦略構築のためのデータを提供します。
Baremetrics Bare

Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.