顧客行動分析 は昨今のSaaS業界で話題となっています。
「先の行動を一番予測できるのは、過去の行いである」ー 顧客行動を含む人生のほとんどの領域に、このよく耳にする真理は当てはまります。
顧客について知れば知るほど、何を買うかだけでなく、いつ、どのように、そしてなぜ買うかも含めて彼らの支出を予測できるようになります。
これらの行動はある程度個別的ですが、顧客セグメント化で傾向をまとめると、パターンが見えてくるはずです。
このような購買パターンを理解することが、成長戦略を成功させるための基礎となるのです。
マーケティングの各ステップでは、あなたが理想とする顧客は誰であるかを考慮しなければいけません。顧客が何に購買意欲を掻き立てられるのかがわかってくるほど、その情報を活用して売上を伸ばし、顧客満足度を向上させ、成長を最大化させることができるのです。
これらのコンセプトは、顧客のニーズを把握することでチャーンを大幅に減らせることから、集客だけでなく顧客維持にも適用されます。
そのため、特にSaaS業界では、顧客行動分析が大きなビジネスとなっています。
本記事では、顧客行動分析とは何か、そしてその結果を成長戦略にどのように活用できるかを見ていきましょう。
顧客行動分析 とは?
顧客行動分析は、特定の顧客層がどのように購買の意思決定を行うかをモデル化したものです。
このリサーチで調べるのは:
- 顧客が特定の製品やサービスを購入する理由
- どのような調査を行ったか
- ターゲット広告や営業チームからの営業に反応したかどうか
- 購入の決め手となったもの
- 購入方法
- 利用するプラットフォームと支払い方法
- 単発の購入なのか、習慣的な購入なのか、など
- 購入時期
- 時間帯、週末、特定の季節、特定のトリガーの後、など
これらの所見は、製品開発、販売、顧客満足度管理など、企業の成長戦略の多くに活かされています。
顧客行動分析 の必要性
SaaS業界では、知識やデータは成長を支えるものです。これらは、顧客行動分析がロイヤルカスタマーの獲得と維持に役立つ分野の一部なのです。
製品の個別化
顧客はますます、製品やサービスに個別化を求めるようになっています。もし、あなたが顧客のことを知ろうと時間をかけなければ、顧客が求めるような「私だけ」のサービスの提供はできないでしょう。
顧客価値
顧客の種類によって、LTV(顧客生涯価値)は大きく異なります。
LTVとは、顧客一人の定期購読の全期間から得られる総収入のことを指します。例えば、LTVの高い顧客は、中級以上のプランを5年以上、上級のプランを2年以上をおそらく契約しています。このようなユーザーは、収益の大部分を占めると同時に、新規顧客の開拓よりも少ないリソースで済むため、可能な限り満足させる(定期購読させる)べきです。
このような高価値の顧客を早期に認識できれば、カスタマー・サクセス・チームの時間を優先し、顧客一人あたりの単価(ARPU)向上の機会を特定できるようになります。
コンテンツ最適化
顧客行動分析により、顧客がどのようなコンテンツを最も評価しているかがわかるので、ICP(Ideal Customer Profile: 理想的な顧客像)がすでに探している資料を作成することにマーケティング戦略を集中できます。
例えば、Baremetricsでは、顧客インタビューを実施したところ、既存の顧客の多くが、価格体系の最適化が気になっていることが分かりました。
その知識をもとに、SaaSの価格設定に関するトピックを網羅した4つの連載記事を作りました。
こちらをご覧ください
顧客維持
顧客維持は、新規顧客の獲得よりも常に安上がりであり、ユーザーのニーズと懸念を予測することが、顧客離チャーン率を減らす最善策です。
顧客行動分析 は3パターン
顧客行動の分析の際に注目すべきは、お金の使い方です。ほとんどの購入は、3つのタイプの使い方に分けられます。この3つのカテゴリーには、それぞれ独自の動機と購入パターンがあるため、製品がどのカテゴリーに分類されるかの特定に有効です。
ごく一般的な購買パターンは、「複合型」「習慣型」「バラエティ・シーキング型」の3つに分類することができます。
1. 複合型
家や車などの大きな買い物には、複雑な購買行動が生まれます。こういった購入は稀でありとても重要であるため、ほとんどの顧客は相当な時間をかけて慎重に検討します。
これをSaaS企業に置き換えると、会社のハードウェアを大幅にアップグレードするようなものかもしれません。
2. 習慣型
習慣型の購買行動とは、日常的な買い物に適用されます。こういった取引は、最初の購入から繰り返し購入され続けているものであるため、かなり無頓着になりがちです。食料品の買い物が典型的な例です。
SaaSビジネスの場合、これはある種のタスクの定期的なアウトソーシングであったり、他のサービスの月額定額制の定期購読であったりします。
3. バラエティ・シーキング型
バラエティ・シーキング行動とは、顧客が不満から新しいブランドに乗り換えるのではなく、単に新しいものを試したかったという理由で行われる行動のことです。この行動は、デオドラントやパスタソースのような小規模で広く乗り換え可能な購入に適用される傾向があり、主に好奇心や飽きによって動機づけられています。
もし、ユーザーが特にこれといった理由もなく競合他社に乗り換えていることがわかったら(ユーザーの解約調査を通じてこのような声が上がっているはずです)、広告コピーで自社製品の差別化に取り組む必要があるかもしれません。
顧客動向分析 : 顧客が影響される要因
顧客の行動は様々な要因に大きく影響され、その中には、個人的なものもあれば、市場の変化などの環境的なものもあります。
自分たちが影響を与えられる要素を意識し、ビジネスをサポートするユーザーの行動(プランをグレードアップする、周囲にサービスを勧めるなど)を促すために、確実にあらゆる手段を講じることが重要です。一方で、自分が与える影響が及ばない要素もあることを受け入れ、変化に応じて対応できるように準備しておかなければいけません。
マーケティング活動
あなたが完全にコントロールできる要素のうち1つは、マーケティング戦略です。
インバウンド・アウトバウンドのすべての活動は、広告コピーの文言、コンタクトの時間帯、プラットフォームの選択などを含め、ICP(理想的な顧客像)に最適化される必要があります。
個々の好み
顧客の好みは個人的なものであり、完全にコントロールできるものではありません。しかし、ブランド認知は、ある程度影響を与えることができる面があります。
ブランドをどのように売り込むか、そしてサービスを購入したユーザーをどのように扱うかは、時間をかけてブランド認知をポジティブに変化させるための最強の手段になります。
コミュニティの影響と社会動向
コミュニティは消費に強い影響を与えます。結局のところ、大抵の人は家族、友人、同僚の意見を気にし、購入する際には彼らの意見を考慮することになるのです。これと同じ原理が、より広範な社会トレンドにも当てはまります。
例えばソーシャルプルーフを活用してブランド認知の裏付けとなる証言を得るといったようなやり方で、この現象を利用できます。
経済状態
あなたのビジネスを取り巻く環境は、残念ながらあなたがコントロールできるものではなく、経済の変化やその変化に対する顧客の反応で、どのビジネスが成功し、どのビジネスが倒産するかが決まるのです。
しかし、コントロールができないからといって何もできないわけではありません。万が一に備えた資金を十分に蓄えておくことはもちろんですが、自社のサービスを贅沢品ではなく必需品として位置づけることで、たとえ困難な状況が訪れたとしても、顧客にサービスの利用を継続してもらえる大きな動機付けとなります。
購買力
購買意欲の前には購買能力があります。B2Bの分野では、購買力はかなり厳格な企業予算によって決定され、その予算をおおよそ把握することで、価格設定を最適化することができるのです。
また、購買力は、顧客セグメント、特に地域と事業規模によって大きく異なります。
では、顧客の行動に影響を与える主な要因が分かったところで、そのパターンを分析する方法について見ていきましょう。
顧客行動分析 の進め方
顧客行動分析を行うには、7つの基本ステップがあります。まず、これらのステップの基礎となる原則を説明し、次にユーザーデータの解釈に使えるさまざまなツールやプラットフォームについてご説明します。
1. オーディエンスをセグメント化する
顧客の行動はタイプによって大きく異なるため、例えば Baremetrics Segmentation ツールでユーザーを関連するコホートにセグメント化することがとても大事です。
例えば、Baremetricsで作成した顧客コホートには、Metricsのコア製品に加え、Recoverのツールを使用している顧客が含まれています。このコホートの作成は、Baremetrics アプリでは以下のようになります。
2. 各グループが自身のサービスからどのような利益を得ているかを明らかにする
顧客セグメントによって製品の使用方法は異なりますが、顧客分析によって、価値の高いユーザーに最も支持されている機能を特定することができます。このデータは、今後の製品開発や広告コピーに反映されるべきものです。
3. データを活用してインサイトを得る
ユーザーが利用している決済代行会社、質問や問題を解決するためのカスタマー・サクセス・マネージャー、SNSと自社コンテンツとのやり取りや、ユーザーが自社サービスをどのように見つけて利用しているかについての貴重な情報など、あなたの手元は顧客データの宝庫です。
特にユーザー調査やカスタマーサービスへの問い合わせに対するフォローアップメールは、質的データのいいソースとなり、次のような質問の答えに役立ちます。
- 顧客が製品で最も重視している点
- 使っている機能、使っていない機能
- 製品に関する追加トレーニングやその他のサポートが必要かどうか
- 顧客が望む追加機能、およびそのために高い料金を支払うと思われる機能
4. 定量的データと定性的データの比較
次に、集めたデータをユーザーセグメントごとに分析し、これらのデータポイントが時間の経過とともにどのように変化していくかを見ます。
セグメント別に把握すべき指標には、以下のようなものがあります:
- マーケティング活動やSNSとの連動
- サービス購入のタイミング
- サブスクリプションレベルの変更
また、段階的な価格設定を行っている場合、このデータは、さまざまな顧客セグメントの使用状況とリソースに基づいて、段階ごとにいくら請求すべきかのガイドとして使えます。
5. 調査結果をマーケティング活動に応用する
ICPがどのように製品を見つけ、どのような機能が一番気になっているかが分かったら、その情報をマーケティング活動に応用します。
6. Analyze the results結果を分析する
このプロセスの最後のステップは、新しいマーケティング戦略がどのような成果を上げたかを振り返って分析することです。活動内の重要な瞬間を特定するのに役立つツールの一つに、Baremetricsのアノテーションがあります。
7. Repeat繰り返す
このプロセスを一通り終えたら、最初に戻ります。顧客の行動は、主に流動的な市場に対応して急速に変化しています。製品やマーケティングを最新かつ効果的なものにしたいのであれば、最新のユーザー情報を手元に置いておくことが肝心です。
顧客行動分析 プラットフォーム
ここでは、顧客行動分析を行うための代表的なプラットフォームを紹介します。
HubSpot:HubSpotはCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージャー)であり、顧客特性やエンゲージメント活動などの顧客行動に関するレポーティングツールを提供しています。
価格は、無料から月額3,200ドルまでと幅広くあります。
Trifacta:Trifactaは、ユーザーデータを分析し、自動でグラフを作成することで、顧客行動の傾向や異常値を特定できるようになります。またこのプラットフォームは、予測やカスタマーエクスペリエンス向上のための提案も提供します。
プランは無料版もあり、プレミアムのクラスには様々な価格が設定されています。
Woopra:Woopraはカスタマーの購入過程とプロダクト分析を提供します。このプラットフォームは、複数の分析ツールを統合し、顧客の行動を抜け目なく追跡、分析、対処することができます。
価格は、無料プランからカスタム価格のエンタープライズプランまであります。
Baremetrics:BaremetricsはIntercomと提携し、完全に統合された顧客行動分析およびサブスクリプション指標を提供します。
Intercomは、顧客とのコミュニケーションと関わりを最適化するCRMです。Baremetricsは、MRR、ARR、LTVなど26種類のビジネス指標に渡るインサイトを提供します。この2つのツールを組み合わせることで、顧客行動分析のあらゆるニーズに対応する完全な統合ソリューションが実現します。
Intercomが提供するカスタマーサービス指標
Intercomでは、Baremetricsのダッシュボードで、さらに5つの指標を確認できるようになりました。
- 新チケット
- 解決済チケット
- 要返信
- 要解決
- 平均評価
Baremetrics x Intercomでより多くの顧客行動インサイトの取得
Intercomが提供するこれらの指標は、顧客行動の強力な指標となります。また、顧客満足度に関する貴重なインサイトを得ることができます。
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