顧客獲得 戦略

Tomotaka Endo 2022 8 7

SaaS業界では、短期的なマーケティング・プロモーションによる新規の 顧客獲得 は、通用しません。短期間のマーケティング・プロモーションというのは、Eコマースのビジネスモデルのキラー戦略として機能するのです。では、SaaSの獲得戦略として有効なもの・有効でないものは何でしょうか?

本記事では、SaaSのための目的主導型の獲得戦略を構築するための5つの鍵と、その過程でよくある間違いを回避する方法について説明します。

SaaSの 顧客獲得 :基本を押さえる

SaaS企業は、製品を契約してもらう前に、まず顧客との関係作りを重点的に行う必要があります。

一方、eコマースのような他のビジネスモデルは、顧客に購入してもらうことに重点を置き、その後にユーザーとのより深い関係作りに集中することができます。

言うまでもなく、SaaSのセールス・サイクルは長引くプロセスであり、高い製品コスト、プライバシーの問題、複雑な機能、数え切れないほどの製品オプションなどが販売サイクルの長さの原因となって、調査によると平均的なSaaSのセールス・サイクルは約84日にもなるそうです。

SaaSの顧客獲得コストの業界ベンチマークに関して言えば、以下のようなデータがあります:

  • 理想的なLTV( 顧客生涯価値)CAC(顧客獲得単価)の比率:成長中のSaaSビジネスでは、比率が高ければ高いほど売上とマーケティングROI(投資収益率)が向上することを考慮し、LTV : CAC は3 : 1以上の比率を目指す必要があります。ただし、比率が高すぎる場合は、支出が不足し、成長が制限される可能性があります。
  • FirstPage Sageのレポートによると、平均的な顧客獲得コストは500ドルから2000ドルの範囲にあります。

マーケティングキャンペーンのROIを正確に評価したいのであれば、顧客獲得コストCAC (顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)の追跡を始めなければいけません。

このデータは、どのチャネルに投資すべきかを理解し、業界のベンチマークとCACを比較することによマーケティング部門の中核的な強みと弱点を分析する上で、非常に貴重なものであることがわかります。

顧客獲得コストがSaaSマーケティング戦略の中心であるべき理由をよく理解していただいた上で、SaaSのキラー顧客獲得戦略を構築する方法を見ていきましょう。

目的志向の 顧客獲得 戦略を構築する方法

SaaSの顧客獲得戦略の策定に取りかかる前に、他のSaaSマーケターが顧客獲得戦略についてどのように考えているかを理解しておくとやりやすくなります:

クリスプのマーケティングエキスパートであるタテフ・ハコビアン氏は、顧客獲得戦略とは、新規顧客の好みや行動を理解し、あらゆるマーケティングチャネルを活用してブランドの認知度を高め、顧客との間に影響力のあるつながりを作り出す実行可能なアプローチであると定義しています。

他のSaaSマーケターが顧客獲得戦略を言うときの意味が分かったところで、いいSaaS顧客獲得戦略の構築には何が必要か見ていきましょう。

顧客獲得 戦略1: 最適化されたウェブサイト

ブランドのウェブサイトは、見込み客に与える第一印象であり、印象的でなければいけませんよね。

例えば、Proofのウェブサイトは、トップページが製品のライブデモにもなっています。

プルーフの成功の秘訣は、ビデオを駆使した顧客の声や信頼できるブランド名の使用によってソーシャルプルーフを実証する能力にあります:

極めつけは、リアルタイムで超個性的なユーザー体験の提供です。ちなみに、ホームページはユーザーのタイムゾーンに自動的に適応し、戦略的に配置されたCTA(コール・トゥ・アクション)が表示されます。

ホームページが製品のパンフレットやデモのような役割を果たすことで、情報が豊富でユーザーフレンドリーで、魅力的なブラウジング体験が可能になります。

顧客獲得 戦略2: 顧客を中心に据えた行動

市場で圧倒的なシェアを獲得したいのであれば、ビジネスよりも顧客を先頭に置くべきです。製品の利点を示すのではなく、顧客が製品を使うことによって得られる価値を示すのです。

これを行う方法は多数ありますが、まずは顧客の経験を改善し、あなたのウェブサイト上のライブチャットソフトウェアを統合するところから始めましょう。

顧客や見込み客は、即座にリアルタイムでエージェントに繋がり、数秒以内に彼らの質問に対処してもらえます。CX(カスタマーエクスペリエンス)係の貴重な時間を無駄にしないために、多くのカスタマーサポートソフトウェアでは、チャットツール内にナレッジベースを統合できます。これには、繰り返し使用されるユーザーの質問に対する有用な回答なども含め、顧客がすぐに(そして効果的に)回答を得ることができます。

顧客のライフサイクルの節目節目で、次の2つの質問を自問してみましょう:

  1. ユーザーの目標達成をどのようにサポートしているか
  2. どのようにユーザーのペインポイントに対処し、ユーザーの信頼と安心を得ているか

ライブチャットなどの強力なツールを利用すれば、顧客体験をレベルアップし、スピード、精度、およびユーザー満足度の高い強力なCXをもたらすことができます。

顧客獲得 戦略3: サクセスストーリーを紹介

これは、最も試行錯誤された戦略の一つであり、素晴らしい効果をもたらします。実際、Broadlyの調査によると、ポジティブなレビュー投稿によって、顧客の消費は31%伸びるそうです。 

幸い、以下ような色々な方法で顧客のサクセスストーリーは紹介できます:

  • このホームページにあるように、提携した老舗企業のブランドロゴを挿入することによる、ソーシャルプルーフのアピールします。
  • 以下のHeapのページにあるように、ケーススタディのセクションを設けて、製品やソリューションがどのように顧客に貢献したかを明確に説明し、以下のように引用や動画の形で最新の顧客の声を紹介します。

ウェブサイトやアプリでソーシャルプルーフを示すことは、見込み客がコンバージョンに至るまでに必要とする後押しとなり得るので、ウェブサイトを手段として、あなたのブランドがいかにユーザーの生活を便利にしているかを、一度に1つの証言として、伝えるのではなく「見せる」のです。

顧客獲得 戦略4: 価格設定ページの最適化

SaaS企業が犯す最大のミスの1つは、Webサイトに料金プランの全体像が掲載されていないことです。

顧客の時間を無駄にすることなく、ブランドのユーザー重視の価値観にスポットライトを当てるには、以下のブランドが示すように、最適化された価格設定ページを作成することです。

  • HubSpotの価格設定ページでは、戦略的に作成された価値メトリクス(ユーザーごと、1GBごとなどをベースとするユーザーが支払う価値)に焦点を合わせています。
  • Insightlyの価格設定ページでは、「ユーザー1人当たり」を主要な価値基準として、小規模な顧客をターゲットにしています。

この戦略は、現在無料プランで活動しているパワーユーザーに、無料プランで製品から価値を引き出しているので、購入の意思決定をしてもらいたい場合に有効です。

  • 価格帯が多すぎて紹介しきれない場合は、Uservoiceの例を参考にしてください。一般的な価格帯のページが用意され、異なる価格帯を区別して、最後に【全機能リストを見る】ボタンでさらに詳しく調べることができます。
  • また、Sender社がウェブサイトで行っているように、動きのある価格ページで実験してみることもできます。

価格ページの最適化によって、多くの顧客にとって最も関心のある価格について正直に伝えることができ、後から追加機能などで不愉快な思いをすることを防ぐことができます。 

また、年間契約プランの中に割引関連の内容を盛り込んだり、特定のユーザーペルソナ/中小企業に基づいた価格プランを紹介することで、販売サイクルを加速させることができます。

顧客獲得 戦略5: 価値あるコンテンツの作成

実を言うと、コンテンツマーケティング戦略やSEO(検索エンジン最適化)のベストプラクティスの中で、プロモーションコンテンツは最も小さな割合を占めるべきものなのです。目安としては、SaaS企業は、製品に関連するコンテンツに集中するのが基本です。

インスピレーションが必要な場合は、Ahrefsの例であるSEO製品を見てみましょう。

  • ブランドのブログセクションは、製品に密接に関連したブログ記事で構成されており、教育的で価値あるものです。

さらに重要なのは、製品に関連する動画を強調し、できるだけ多様で興味深く読めるコンテンツにすることです。

コンテンツをきれいに整える際には、自社製品が対応できる検索クエリの検索ボリュームがあるかどうかを把握すべく調査を行います。ブランドでは、これを「ビジネス・ポテンシャル・スコア」と呼んでいます。

もし答えが「Yes」なら、上、中、下のファンネルに基づくコンテンツの推進を避けることができます。その代わりに、現実のビジネスの可能性を示す、製品中心のコンテンツを制作しましょう。このコンテンツには、関連するキーワードやトピックが含まれ、顧客のペインポイントに対するかけがえのないソリューションとして、当該製品をさりげなく売り込むことができるのです。

Ahrefsのツールを使ってどのようにSEOに取り組むことができるかを、効果的かつさりげなく視聴者に伝えています。このコンテンツの素晴らしさは、可能な限り宣伝的でなく、間接的で、製品が中心に置かれていることにあります。さらに、ビデオ、ケーススタディ、一般的なSEOブログなどの様々な価値あるコンテンツカテゴリーを明確に区分けして使用しているため、読んで損はありません。

このブログの最終章に入る前に、マーケターがSaaSビジネスの顧客獲得戦略を立案する際に留意すべき点について、マーケターから話を聞いてみましょう。

Moosendのマーケティング・コピーライターであるアレックス・ソウショルコフ氏は、マーケターとして成功するには、まず購入する人たちを知ることが必要だと説明しています。その人たちがどんな人なのか、どんなことに心を動かされるのか、どんなことに困っているのかを知る必要があり、そうすることで初めて、獲得計画を立てることができるのです。

筆者のベストアドバイスは、ターゲットとする顧客をセグメント化し、それぞれに個別のコンバージョンファネルを作成することです。そのためには、広範囲に渡る調査を行い、顧客を知り、顧客プロファイルを作成し、それぞれのカテゴリーに異なるターゲットを設定しなければいけません。

ファネルの各段階にある見込み客に対して、インタラクティブなコンテンツ、メール、ブログ記事、ビデオなどの様々なフォーマットで教育情報を提供することで、SaaSの見込み客に対してより適切で個別化された体験を与え、より多くのコンバージョンが実現できます。

広い範囲での顧客獲得計画の代わりに、より具体的な計画が必要です。誰をターゲットにしているのかが分かれば、消費者カテゴリーごとに戦略を調整するのはずっと簡単になります。

この記事を終える前に、SaaSの顧客獲得戦略を立てる際に絶対に避けなければならない共通の間違いについて見てみましょう。

顧客獲得 戦略でよくある失敗を避けるには

1. メトリクスの把握: 顧客獲得戦略の効果を追跡していないと、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか知る由もなくなります。そこで、定期的にモニタリングすべき上位3つまたは5つのメトリクスをリストアップし、それに従って戦略の変更や方向転換をしていきましょう。

2. 製品の宣伝よりも解決策の強調:自社の業績を誇示し続けるブランドほど、顧客を困らせるものはありません。 顧客は、製品を使用した後の具体的な改善点を知りたがっています。CAC(顧客獲得単価)戦略では、以下のような具体的な改善策に焦点を当てましょう:

  • チームとブランドの中心的価値にまつわるパワフルで魅力的なストーリーでの、顧客との強い結びつきの構築
  • 特に見込み客からの問い合わせや無料トライアルへの申し込みで、信頼と信用を得ることなどの顧客の成功事例
  • 見込み客の最大のペインポイントを解決して目標達成をサポートするために、製品がどのように役立つかを明確に示すコンテンツ

3. 顧客の解約に固執しない:最善の努力にもかかわらず、解約してしまう顧客がいることに気づいたら、その顧客を解約させましょう。とはいえ、フィードバックを集めて、なぜそのサービスが気に入らなかったのかを尋ね、その回答やデータを分析するようにしましょう

これらの実用的な見解を利用して、カスタマーエクスペリエンスはさらによくなります。満足しているユーザーと不満を抱いているユーザーの両方から、リアルタイムのフィードバックを収集するようにしてください。

SaaS 顧客獲得 戦略のまとめ

すべてのアカウントで成果を上げる顧客獲得戦略を構築するのに、「万人受けする」アプローチは存在しません。

また、Niftyの共同創業者であるジェフリー・ケーガン氏は、「Niftyは、競争の激しいプロジェクトマネジメント業界において、理想の顧客像を理解し、その顧客層に照準を合わせることで常に差別化を図り、新規ビジネスと顧客獲得というフライホイールを繰り返してきました。」と述べています。

最終的には、製品、ユーザー層、ブランドの強みなどによって、ブランドごとに顧客獲得までの道のりが異なることを忘れないでください。上記で説明したヒントやハックを活用し、販売サイクルの全期間を通じてユーザーを満足させるために、独自の工夫を凝らすことをお勧めします。

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Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.