チャーン分析とは

Tomotaka Endo 2021 5 31

この記事では、解約の基礎の部分、そしてそのような事態に陥ったときに使えるチャーン分析のための簡単な3つのステップのプロセスを詳しく説明します。

想像してみてください。過去6ヶ月間で、あなたのSaaSもしくはサブスクリプションサービスの解約率が4%だったものが、10%を超えました。

そんなことがあれば、普通はパニックになり、物凄いストレスになりますよね。パニック状態に陥り、この状態を取り戻そうと大胆なビジネス戦略の変更をとる経営者もいるかもしれません。

ただ、こういう時は、一度歩みを止め、一歩引いて、いくつかのチャーン分析を行うことで何がうまくいかなかったのかを真剣に分析してからアクションを起こすべきです。

チャーン分析 (Customer Churn Analysis)とは?

チャーン分析とは、データを使って顧客が自社の製品やサービスの利用をやめてしまった理由を追跡するプロセスです。解約率を分析することは、解約率という数字を知ることだけを意味するのではありません。顧客がなぜその率で解約しているのか、そしてその問題を解決する方法を見つけ出すことまで含んでいます。

チャーン分析解約予測は、似ていますが同じものではありません。
チャーン分析は、顧客が解約する理由を理解するのに役立つので、解約を減らすための計画を立てることができます。
チャーン予測は、フィードバックや過去のデータに基づいて顧客が解約する可能性を予測するもので、先の計画を立てることができます。解約予測について詳しくはこちらをご覧ください。

チャーン率の分析は、なぜ必要なのか?

解約率が何%であるかという具体的な数字を知ることは、とても大事なことです。しかし、どの顧客が解約しているのか、なぜ解約しているのか、いつ解約しているのかなど、その他のデータを理解していなければ、この解約率という数字を改善していくことはできないでしょう。

だからこそ、チャーン分析はサブスクリプションビジネスにとって非常に重要なのです。

SaaS企業が顧客を維持することの難しさを認識していても、それを解決する方法がわからないという状況がよくあります。すると、経営者たちは、根拠のない仮定を立てたり、オンラインで見つけた戦略をランダムに使ったりすることに頼ってしまいます。

その場合の問題点は、顧客維持の背後にある「なぜ」を理解していなければ、どのような変更を加えても問題を悪化させる可能性があるということです。そして、すでに高い解約率に直面していて、理由のない価格設定・機能・プロセスを変更することによって、より多くの収益を失うという結果に陥ります。

時間をかけて顧客が解約している理由を分析すると、何を変更すべきかの明確なアイデアが見えてきます。その後、影響を測定、改善していくためのコントローテストを行っていくべきなのです。

チャーン分析 を行うタイミング

ほとんどの人は、ある日目が覚めて、「よし、今日はチャーン分析をしよう!」なんてことはありませんよね笑。

通常、解約率を分析しなければならないと思わせるキッカケとなる出来事があるはずです。例えば、ある月に突然、解約率が急上昇したとじゃ、過去6ヶ月間で解約率が徐々に上昇しているなどがそのケースです。

これらは何かが起こっていることを示す赤信号であり、何が起こっているのかを知るためにデータを掘り下げる必要があります。

きっかけは必ずしも悪いことばかりではありません。数ヶ月前に新規顧客を対象にした製品紹介Eメールキャンペーンをロールアウトしたかもしれませんが、それが解約率にどう影響を与えたかどうかを見たいとします。これもチャーン分析です。

経験則として、いつもと違うこと(良いことも悪いことも)に気づいたとき、あるいは解約率に影響を与える可能性のある変更を行ったときは、分析を行うのに良いタイミングだということです。Baremetricsを使用すれば、簡単に始めることができます。以下のリンクより、無料トライアルを始めてみて下さい。

チャーン分析 を行う3つの簡単なステップ

チャーン分析は、やみくもに飛び込んで突っ走るのではなく、まずフレームワークを作るのが一番簡単だと思います。
最初に問いただすべきことは、どのような問題を解決しようとしているのかということです。

この記事では、解約を減らす方法を理解したいと考えています。そのためには、主に2つの質問に答える必要があります。

1. どの顧客が解約しているのか?
2. なぜ解約しているのか?

この2つの質問を出発点にすることで、データをどう見るかのコンテキストと方向性が見えてきます。そうすることで、終わりの見えない無限のデータの迷路に迷い込む可能性を減らすことができます。

分析するものがわかったところで、チャーン分析をStep by Stepで進めていきましょう。

Step 1:チャーン分析ツールを設定する

これはステップ1なのかどうかも分かりませんが。。。どのようなタイプのチャーン分析を行うにしても、分析するデータが必要です。

そして、そのデータを分析するサブスクリプション分析ツールが必要です。もちろん、この記事ではBaremetricsをお勧めします。当社の製品だからというだけでなく、Baremetricsだけで十分な洞察を得ることができ、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるからです。

ダッシュボードから必要な情報をすべて得ることができ、さらに必要な場合はスプレッドシートにデータをエクスポートすることもできます。

チャーン分析 ダッシュボード

Baremetricsのチャーン分析ダッシュボード

また、このガイドの残りの部分にはBaremetricsを使用するつもりなので、分析方法を容易に理解できるかと思います。

高度なチャーン分析をしたい場合に役立つ他のツールとしては、MixpanelAmplitudeのような製品分析ツールです。これらのツールでは、人々がどのようにあなたの製品を使用して、どのようにエンゲージメントしているかを掘り下げることができます。

例えば、どの機能が最も顧客が使いたくなる機能なのかを知ることができます。逆に、ユーザーが一度や二度使っただけで二度と使わない機能も確認することができます。

製品へのエンゲージメントから チャーン分析

製品のエンゲージメントは解約の大きな指標となり得るので、このデータは本当に便利です。

この記事では、ユーザーの行動ではなく、顧客のチャーン分析に焦点を当てたいので、ここではあまり触れません。しかし、興味があれば、Mixpanelには、ユーザーの行動を分析する方法についての動画も確認してみてください。

Step 2. 顧客が解約している理由を知る

なぜ顧客が解約しているのかを判断するには、いくつかの方法があります。

1つ目は、多くの小規模SaaS企業が行っている方法で、顧客が解約した後にメールを送信するというものです。メールの中で解約の理由を直接聞くか、アンケート(TypeformやGoogle Formsで作成することができます)に誘導します。

このアプローチは、SaaS企業の初期段階ではうまく機能します。しかし、ビジネスが成長するにつれ、顧客が離職している理由を見つけるために、より拡張性の高い方法が必要になるでしょう。そこで、2つ目の方法の出番です。

Baremetricsでは、次のようなサービスも提供しています。解約インサイトを使用して、顧客がアカウントを解約する前に回答してもらうアンケートを作成しています(メールオプションもあります)。以下のようなものです。(日本語可)

アンケートで チャーン分析

Baremetricsの解約インサイト機能で使えるアンケート

フォームにはすべての情報が記録され、ダッシュボードではすべてのレスポンスを追跡することができます。

解約理由アンケートの結果から チャーン分析

ダッシュボードではすべてのレスポンスを追跡可能

また、解約の理由でOtherを選択した方には、より詳細に答えてもらうこともできます。

解約理由がOtherでも深堀りで アンケートで チャーン分析

以上の情報だけで基本的なチャーン分析を行うことができます。

例えば、人々が解約する最も一般的な理由を見て、それぞれの解約理由から毎月どのくらいのMRRを失っているかを正確に確認することができます。

MRR喪失による チャーン分析

「高すぎる」などの解約理由については、もっと掘り下げる必要があるでしょう。でも安心してください、それを分析する方法は後ほど詳しくご紹介します。

しかし、このようにデータを見ることで、次に何をすべきかの優先順位をつけることができます。例えば、顧客が「他の製品への切り替え」を選択した場合、どの競合他社に切り替えようとしているのかもコメントしてもらいます。

そして、Crayonのこのような機能比較マトリックスを作成して、顧客が乗り換えようとしている競合他社とあなたの製品がどのように拮抗しているかを確認してみましょう。

rayonの機能比較マトリックス

あるいは、価格設定が一貫した解約の理由として出てくるのかもしれません。その場合は、価格設定をもっと深く掘り下げて、いくつかのテストを行うことを検討してみてください。

しかし、注意すべきこともあります。価格設定が一貫した解約の理由になっていることに気づいた場合、それは自動的にあなたがより少ない料金を請求する必要があることを意味するものではありません。それは、現在の価格を正当化するためにもう少し価値を提供する必要があることを意味するか、解約した顧客が間違ったプランを利用していたことを意味するなんてこともありえます。

考慮すべきもう一つのことは、あなたが得ている解約のタイプです。顧客は解約しているのか、それとも支払いを行っていないだけなのか?

Baremetricsでは、解約(キャンセル)と未払いによる解約の内訳を見ることができます。

チャーンと未払いの チャーン分析

解約と未払いは違います。解約した顧客は積極的にオプトアウトし、理由を伝えます。未払いの顧客は、支払いを見落としたり、クレジットカード情報の更新を忘れたりしている可能性があります。何を修正すべきかを決定する前に、何に対処しているのかを知ることが重要です。

顧客が解約している理由を理解したところで、解約している顧客が誰なのかを分析する必要があります。

Step 3. コホート別に解約を分析する

あなたが予算編成ソフトを販売するSaaS企業だと仮定しましょう。過去3ヶ月間に300人の顧客が離脱しました。その300人の顧客は、異なるプラン・レベルにあり、異なる時期にサインアップし、異なる国に住んでいます。

300人の顧客を同時に分析するのか、プランレベル、契約日、場所に基づいてグループ化して分析するのか、どちらが効果的だと思いますか?

最初の方法で解約率を分析すれば、ある程度の高レベルの傾向を見ることができるかもしれません。しかし、より実用的な洞察を得るためには、2つ目の方法で解約した顧客をより小さなセグメント、つまりコホートに分解することの方がはるかに有益です。

まずは、プランレベルと契約日の2つの良いコホートから始めましょう。

価格またはプランレベル別にチャーン分析を行う方法の例を見てみましょう。ある月にどのプランで最も解約が多いかを簡単に把握するには、Baremetricsの『メトリクス > 顧客解約』に進みます。少し下にスクロールすると、すべてのプランのリストと、各プランの解約率が表示されます。

コホート別の チャーン分析

ある月に最も解約率が高いプランを特定したら、その特定の顧客が解約している理由をゼロにしたいと思うでしょう。ここではスプレッドシートを使用します。

解約インサイトにアクセスし、日付範囲を選択します。次に、顧客のリストに移動し、表をダウンロードしてください。

チャーン顧客のリスト表をダウンロード

スプレッドシートでは、プランごとにデータをソートして、そのプランで解約した全ユーザーの具体的な解約理由を確認することができます。

スプレッドシートで チャーン分析

このスクリーンショットには写っていませんが、スプレッドシートには解約理由ごとのコメントまで表示されています。そこから、プランレベル別の解約理由の傾向を調べることができます。

コホート別に解約を分析するもう一つの方法は、契約日別の顧客維持率を見ることです。ある月に契約したすべての顧客を見て、その後何ヶ月間継続しているかを見るのです。

Baremetricsで、顧客チャーンダッシュボードに向かいます。次に、顧客維持表までスクロールします。これは、サインアップ日に基づいた顧客の前月比の維持率を表示します。

顧客維持率で チャーン分析

契約日別の顧客維持率を確認してチャーン分析

このデータを使用する1つの方法は、人々がいつサインアップしたかに基づいて解約傾向を比較することです。例えば、上の表を見て、私が最初に気づいたことの1つは、2019年7月と2019年4月のコホートは、他のコホートと比較して、最初の数ヶ月後にかなり急激に落ち込んでいるということです。その一方で、3月のコホートはかなり堅実な数字を出していました。

顧客維持のサインアップ時期別で チャーン分析

これをもう少し深く掘り下げてみたいと思います。そこで次のステップは、7月と4月に登録した顧客と3月に登録した顧客を比較することです。

これを行うために、私はBaremetricsのCustomersを開きます。そして、LTVが0より大きく(無料トライアルを除くため)、2019年7月にサインアップした顧客のみを表示するために、いくつかのフィルターを追加します。

Baremetricsでコホート作成

3月と4月のコホートについても同じことをしました。さて、2つの異なるコホートについて、何か目立つものがあるかどうか、もう少し詳しく見てみたいと思います。まず、2つのコホートのユーザー1人当たりの平均収益(ARPU)を比較することから始めます。これは各コホートの顧客の価値のアイデアを与えます。

ARPUが低い顧客は、エントリーレベルの顧客です。これは、7月と4月のコホートの顧客が3月の顧客よりも早く脱落した理由を説明するのに役立つでしょう。6ヶ月間の比較から分かったことは以下の通りです。

顧客セグメントして チャーン分析

3月のARPUは7月、4月の2倍以上です。このことから、私の推測では、3月には高額プランに申し込んだ「太客」がいたのではないか、あるいはアドオンがあったのではないかと考えています。

そこで、3 月のコホートの顧客がどのようなプランで契約したのか、4 月と 7 月と比較して再確認してみましたが、私の推測はかなり正確なようです。4月と7月には、かなりの数の顧客が低価格のプランに申し込んでいました。

一方、3月には、より高いレベルのプランに申し込まれた方が多く、平均よりも長く維持されていました。この簡単なチャーン分析から得られたものは、次のような顧客を維持する可能性が高いということです。

・アドオンを利用している
・より高度なプランへのお申し込み、またはアップグレード

コホート分析のデータを使って解約率を分析するもう一つの方法があります。チャートの0-2ヶ月を見てください。

契約から90日間の チャーン分析

最初の90日以内に急な解約が表示された場合、それは通常、何か問題があることの兆候です。ほとんどの場合、以下のような組み合わせが考えられます。

・顧客と製品に対する期待のずれ
・劣悪なオンボーディング
・悪い活性化モデル(フリーミアム、無料体験、有料体験、返金保証、相談など)

次のステップとして、その90日以内にキャンセルされたアカウントを見てみましょう。これを行うには、Baremetricsの”顧客”に進み、いくつかのフィルターを適用します。

この例では、3月にサインアップした顧客のみを表示するフィルタと、~90日後に解約した顧客を特定するフィルタを適用しました。

顧客リスト化して チャーン分析

そして、各アカウントに入り、その解約理由を見ることができます。Baremetricsでは、顧客がサインアップしてから解約するまでの顧客の活動のタイムラインを見ることができます。以下は、スクリーンショットにある解約された顧客の一例です。

顧客の活動のタイムライン

見ての通り、このお客様は契約して数日で解約しています。そして、その解約理由は「高すぎる」というものでした。この場合は、製品を少し試してみた後、期待値がずれていたことの表れかもしれません。

もし、この顧客がなぜ解約したのか、より多くの洞察を得たい場合は、メールでフォローアップをしてみてください。もし、最初の90日以内に解約してしまう顧客が多いのであれば、解約フローの中にExitインタビューを含めるのも悪くないでしょう。

最初の90日間の分析に加えて、コホートチャートを使って長期的な顧客維持の傾向を見つけることもできます。90日以内に解約した顧客のセグメントを作成したのと同じ方法で、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月のプロセスを繰り返すこともオススメします。

以上がチャーン分析の方法のほんの一例です。解約した顧客をセグメント化し、さらに分析する方法はたくさんあります。しかし、私たちが概説したフレームワークに従えば、次のステップに進むために必要な洞察力のほとんどを得ることができるでしょう。

チャーン分析 の次のアクション

ステップ1は完了しました。どの顧客が解約しているか、そしてその理由がわかりました。次の問題は、あなたが見つけたものに対して、どうアクションを起こしていくのかということです。

チャーン分析を始める準備ができたら、Baremetrics無料トライアルを利用してみてください。

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Tomotaka Endo

Tomo Endo is a dynamic professional with a rare blend of achievements in technology, community leadership, and sports. As the Co-Founder of Nihonium.io since August 2023 and Community Lead at Xenon Partners since September 2019, Tomo has been pivotal in driving innovation and fostering community engagement within the tech industry in Tokyo, Japan. His role in facilitating growth and providing actionable insights at Baremetrics, coupled with his contribution to MetricFire's technical monitoring community, underscores his proficiency in leveraging technology to nurture professional communities. Beyond his tech-centric endeavors, Tomo has excelled as a professional athlete in squash, achieving the no.1 ranking in Japan and a global ranking of 79th by August 2020.